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赤い霧/Le Brouillard Rouge  (ねこ4.4匹)

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ポール・アルテ著。平岡敦訳。ハヤカワ・ポケット・ミステリ

1887年英国。ブラックフィールド村に、『デイリー・テレグラフ』の記者と名乗る男が十年振りに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を、正体を隠して調べ直そうというのだ。十年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋で、何故か背中を刺されて死んでいた。当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに新たな殺人事件が起こり…。奇怪極まる密室殺人と犯罪史上最も悪名高い連続殺人を融合させ、“フランスのディクスン・カー”と評される著者が偏愛して止まない冒険小説大賞受賞作。(裏表紙引用)
 
ポール・アルテ来日で盛り上がっているようなので。実はまだ二冊目。帯にある「三年連続NO.1」という惹句はこの作品を指していると思っていいのかな。
 
舞台は1887年のイギリス。9年前に起きたリチャード・モースタン殺しを捜査するべく、シドニー・マイルズと名乗る記者が現れる。被害者がロッジの端部屋でマジックを披露しようとした寸前、仕切りのカーテンの向こうで刺殺されたのだ。窓の外には少年たちの目があり、容疑者たちは全員衆人環視の中にあった。聖人と呼ばれていた男を殺した動機とトリックは?
 
うーん、これ、どこまで書いていいのかすごく悩む作品。仕掛けだらけ。第一部と第二部に分かれていて、第一部はシドニーの正体が明らかになり犯人を突き止めるところまでが描かれる。シドニーと宿の娘コーラとのロマンスも重要で、会合から二時間後に新たな殺人が次々と起こるなどテンポが良くてがっついて読める。翻訳がいいのかモトもいいのか、登場人物もすぐ覚えられるし人間関係も混乱しない。シドニーが三役やってるのがすごいな。トリックは結構ご都合主義なところが多かったけど。
 
ところでこの作品の読みどころってガッツリ本格ミステリしてる第一部なのか、ガラっと作風を変えて別の物語に突入した第二部なのかどっちだろう。第二部不要論も勃発していたようだけど。個人的には第一部が好きだが、有名なあの事件をモチーフにしているのと、なぜかホームズ&ワトスン(らしき人物)が登場したので楽しかった。トリックがやっぱりラッキーが続いただけ、という危ういものだっただけに。サイコパス多すぎ。論理に徹しているわけではなくかなりドラマティックなので、どっぷり入り込めた。ポール・アルテすごく好き。ハマれそう。