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青の炎 (ねこ4.1匹)

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角川文庫。


貴志さんの傑作長編です。
映画化もされたので、ご存知の方は多いのではないでしょうか。
ちなみに、私の所持している本はこの表紙なんです^^;すいません。

櫛森秀一、17歳、母と妹の三人で平和に暮らす高校生。
そんな秀一の生活は、ある日一人の闖入者によって脅かされる。その人物とは
母が十年前離婚した曽根という無法者だった。
愛する母、妹、そして自分を守るため、秀一は曽根殺しを計画する。
その計画は緻密に練られ、隙のない完全犯罪のように見えたがーーー。


とても哀しい物語でしたが、同情は芽生えても共感はできませんでした。
通常、読者は主人公(語り手)と同調し、物語を読むものですが、
(本作はまさに秀一の一人称で進むストーリー、)なのに、
「この子の視点で自分は読んではいけない」とブレーキがかかってしまうのです。
曽根が登場したあたりでは秀一と一体となって読みましたが、殺人を計画、実行する
くだりからちょっと一線を引くことになりました。
特に、二番目の問題が発生してからは。。。

結局、一番悪かったのは誰だったのでしょうか。
「青の炎」まさにテーマ通り、健全な普通の少年が、家庭環境が壊れ、殺人を計画し、
心まで焼き尽くされてしまう様を見事に描いています。
少年は、どこで間違えてしまったのでしょう。
彼のとった行動全て自分は奨励できないですが、そうさせた元々の原動力がとても哀しい。

現代の警察の仕組みに憤るのか。曽根という男を責めるべきか。
弱かった母を叱るべきか。少年は正義感を何かとはき違えたのか。

そして、この悲劇的な結末を読んで、それぞれ皆さんの中で答えが出ましたか?