すべてが猫になる

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月の扉 (ねこ3匹)

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石持浅海著。光文社カッパノベルス


那覇発東京行きの便で起きたハイジャック事件。犯人グループは3人。1人ずつがそれぞれ
乗客の幼児を人質にとり、「那覇警察署に留置されている彼らの師匠を、制限時間までに
空港滑走路まで連れて来い。釈放する必要はない。」と要求する。
その完全閉鎖状況の中、機内のトイレで、人質にとった幼児の1人の母親が死体で発見された。
しかも、その状況は不可解で、手首をカッターナイフで切る、というものだったーーー。


うーん、これ、実は記事にするかどうか迷いました。
設定は大好物、結末も奇抜で小躍りしたくなる展開、本名不詳の即席名探偵ーー。
テンポは良く、読みやすく、明確にケチをつける所がはっきり言ってなかったのです。
と言うと最高に楽しんだかのようですが、逆でした。気絶したいほどの。要は、
個人的に文章が合わなすぎました。
「文章が合わない」。ということはもうどんな素晴らしいストーリーであろうともう
致命的。直接関係のないエピソードにツッコミを入れまくり、そうなると肝心の
論理や心理などにも悪影響。


ある意味、この奇抜な設定、人物、展開と、まっったく個性のない主要人物たちのギャップを
楽しみたかった。中途半端な人物描写がそれを台無しにしてしまっているのでは。
座間味君だって、私はそんなに聡美が持ち上げるほどの人物ではないと思うし。(聡明なのは
間違いなくとも、「他人の子供なんか知るか!!」このセリフ、いくら弁明されても
こんなストーリー上のキイを握る人物に言わせていいとは思えない。人間、切羽詰まった状況
だからこそ本来の人格が突出するものでは?自分が彼の恋人なら百年の恋も冷めかねない)

どうしてこんな完璧な○殺状況を○殺だと疑うのか?
トイレのあのトリック、別にこの設定である必要が全くないですしね。全体的に規模がでかい
ストーリーの割になんて原始的な。

そもそも、石嶺がマークされている理由がここまであからさまなら、警察内部にまでそのカリスマ性を
盛り込むのは甚だ疑問。サリン事件と変わらないじゃないですか。
いっそもう新興宗教だという設定にしてしまえば、その警察内部にまでカリスマ云々、が
斬新で説得力を持つのに。それはもう、座間味君がクライマックスで笑い出したあのくだりで
明瞭だとは思いますが。。。じゃあそれでいいのか。てゆうか、そこをちゃんと描いてくれぇ。


常に作家たるもの、今まであるべきものを壊し、批判を恐れずタブーに挑むべき、と
言ったのは誰だったかしら。

再読の暁には、肩肘張らずにさくさくとエンタメとして楽しみたい。
その時は素直に「面白かった」と白状できる気がする。(おい^^;)