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霧の迷宮から君を救い出すために (ねこ4.2匹)

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黒田研二(クロケン)著。実業之日本社ジョイ・ノベルス。


「動くものが見えない」。ある事故で、動体視力を失ってしまった青年、杉村。
密室のシェルターから職場の上司、由希の死体が発見され、さまざまな騒動に巻き込まれる。


いいですねえクロケン!
まだクロケンワールドは2冊目ですが、すっかりとりことなってしまいましたよ。

動体視力を失う、という設定は奇抜ながらも、文章が読みやすく構成も正攻法(の範疇)のため
とっつきやすいです。主人公の仕事がセキュリティ商品の開発、営業、販売という設定が
さらにいい。はっきり言って最近、設定の斬新さだけに力が入っていて後はあららら…という
作品を多く読みすぎてて怒ってます私。

ちゃんと、設定の一つ一つが謎解きに生かされておりますよ。
小道具が活躍するのも、実は最初は「狡くねーか」と思ったのですが。違いました。
文章の先を読むとそれが必然であることが判明するのですよ。
伏線があちこちにばらまかれていて、最後にそれが一つにまとまるのもすんばらしい。
登場人物も、ちょっと「ジャイアンの法則」を使っていてベタといえばベタなんですが、
良いですね。心が通い合う様が見事ですよ。

この薄さでここまで書けりゃ上等。誰ですか、「薄い本は物足りない」なんて言ったのは。(お前だ)


難を言うなら、この方の作品はどうも結末が「説明、説明、説明」でだるい。
なんで続けるんだよ~と思わせるようなどんでん返しも気に入らない。
志保さんとのエピソードももう少し必要かも。

結末の壊れ方は好みだったからまあ良しとしましょうかね。