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絹靴下殺人事件/The Silk Stocking Murders  (ねこ3.6匹)

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アントニイ・バークリー著。晶文社

ロンドンに出たまま消息を絶った娘の行方を探す父親の手紙に動かされ、ロジャー・シェリンガムが調べてみると、劇場でコーラスガールとして働いていた彼女は、数週間前に絹のストッキングで首を吊って死んでいたことが判明する。しかし、同様の事件が続発していることを知り、疑惑を抱いたシェリンガムは独自に調査を開始、やがて若い女性ばかりを狙う絞殺魔の存在が浮上する。無差別殺人に取り組んだバークリーの才筆は、ここでもテーマに強烈な一ひねりを加えている。 (あらすじ引用)


ロジャー・シェリンガムシリーズ9冊目、制覇しました!ぱちぱち(*^^ノノ☆

どうもバークリーは後期作の方に傑作が集中しているように思う。「ジャンピング・ジェニイ」しかり、「最上階の殺人」しかり、本作しかり。様々な試みに挑戦し続けているバークリーだが、結局正統派により近いものの方が出来が良いと自分は思う。本書は「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」の続編、対となっており、あの失敗を踏まえたからこそラストの掛け合いが光り輝くものとなっているのは明らかで、警察との関係が時の経過と共に良好となっているのも決してシリーズの魅力を損なっていない。シェリンガムの特徴となっているファルスの要素も健在で、試行錯誤し失敗するか成功するかの緊迫感をも失わず、どちらの長所も備えた本書はシリーズ内でももっと評価されるべきであろう。

ところで過剰とも言えるアクション(犯人をあぶり出すための首吊り芝居)は、物的証拠に弱いシェリンガムが苦肉の策で取った手段だろうか。自白と強い確信によった推理というマンネリからの脱出を意識したと思われるバークリーは、ここで一つの役目を終えたのではないだろうか。トリックの出来ではなく連続殺人に対する動機のバリエーションを広げたという意味でも、ミステリ界にとって意義ある作品となったと感じる。


・・・と、感慨にふけっている場合でもない。バークリー作品と共に、別名義の作品もまだまだ待ち受けてるんだよな。ほとんど開架にないのでしばらく休憩。

記念に、ゆきあや的シェリンガム作品ランキング。

1 『ジャンピング・ジェニイ』
2 『第二の銃声』
3 『最上階の殺人』
4 『レイトン・コートの謎』
5 『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』
6 『ウィッチフォード毒殺事件』
7 『絹靴下殺人事件』
8 『地下室の殺人』
9 『毒入りチョコレート事件』

                             (304P/読書所要時間3:00)