浅倉秋成著。角川書店。
実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのか――?（紹介文引用）
秋成さん３冊目。
前に読んだ２冊がとても面白くて好みだったので、出たらとりあえず読もうとあらすじも何も知らず予約してみたが。。家族総出で青森まで御神体を返しに行く、というコメディのようなロードムービーのような、なんだかハチャメチャのごった煮ミステリーだった。
どうにもこうにも、語り手の末っ子周含め登場人物がどれもこれも好感が持てない。こういう有り得ない状況、家族の行動自体はフィクションだから別についていけるんだけどね。
といっても旅中は車がパンクしたり御神体が破損したり窃盗団？に追われたり、犯人は父親じゃない疑惑が出たりと中盤も退屈させないスリルがあった。青森に到着してからのひと騒動も笑えたし、謎が残ったまま怒涛の真相に到達する終盤は読む手が止まらなかったし。父親だけはちょっと同情しちゃったかな。
ただねえ、この年代の作家さんにありがちなのかなあ（先日読んだ朝井さんの作品思い出した）。浮気は悪じゃないだ多様性だの主張が延々続くのが暑苦しくてね。。その上で、家族を継続するかしないかを突き詰めてこの結論になったのも分かるんだけど。周の体質？も含め、色々ととっちらかってたなあ。残念ながら、伊坂幸太郎を目指したんだけど文章力がなくて失敗した作品という印象。まあでも、これからこれから。
