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ハサミ男 (ねこ3.8匹)

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殊能将之著。講談社文庫。 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!(裏表紙引用)
 
20.4.25再読書き直し。
 
犯人が〇〇だというのは覚えていたので、伏線を楽しむ気持ちで。
 
世間を震撼させている連続殺人鬼「ハサミ男」が三度目の犯行を行った。しかし自称「ハサミ男」である「わたし」は殺っていない。偶然遺体発見者となった「わたし」は凶器のハサミを現場に捨ててしまうが――。
 
毎週末様々な手段で自殺未遂を繰り返し、「医師」と対話をする習慣。犯行の綿密さと教養の乏しさがアンバランスで、それがハサミ男の不気味さを醸し出している。交互に挿入される刑事たちの章にはリアリティがあり、ハサミ男自身の独自の調査とリンクし合っている。結局ハサミ男とはなんだったのかは分からないまま、現実世界では驚愕の「真相」で解決を見せる構成。
 
トリックを知っていながらもストーリー展開には手に汗握るものがあったし、人間関係も複雑すぎず、凝った手法ながらも理解が追いつくレベル。十分傑作の名にはふさわしいと思うし、面白い。が、初読時にも感じた「ズルさ」が今回さらに上回って引っかかりとなって残ってしまった。
 
以下ネタバレ↓
 
 
 
 
 
 
 
いまどき男言葉を話す女性なんて珍しくもない、とのことだが私はこんな話し方をする女性には1人も会ったことがない。一人称のミスリードは許容範囲だが、男言葉の女性、というのは前述した理由でアンフェアだと思うのだが。。当時は斬新だったのだろうか。真犯人(三人目の)のような立場の人がこんな理由で女子高生を殺すというのも違和感があった。警察として慎重にならざるを得ない立場で積極的に捜査する刑事たちなど、どうも色々としっくりこない。