すべてが猫になる

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マドンナ (ねこ3.8匹)

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講談社文庫。

40代の課長クラスの「サラリーマン」「お父さん」のお話ばかりが詰まった
5編収録の短編集です。
先日読んだ『ガール』のサラリーマン版といったところでしょうか。

いやいや、奥田英朗は面白い!ハズレなし!(大声)
短編はワンパターンなのがネックだが、敢えてそれを魅力と呼ばせてもらおう。
ファンはそれを待っているのさ。

この短編集を読み終わって思った事。
お父さんってやつは、男ってやつは、なんて見栄っ張りで頑固でそして弱いんだろう。
背負っているものが大きいゆえに、時には家庭や社会での弱者を無神経に傷つけてしまう。
築いて来たものを守りたいゆえに、ポリシーやプライドに頭を占領され自身が傷ついてしまう。
それでいて実は臆病で、女や子供に弱いんだから笑ってしまう。

ここにある5つの物語は、そんな当たり前のお父さん、サラリーマンにきっと活力をくれる。
そのままの彼らで、日常的に知り合って行く他人との接触や軋轢や時には単なる存在だけで、
変われるのだ。変わると言ったって、マイホームを買うだの昇進するだの愛人が出来るだの
そういう直接的な状況じゃない。
自分以外の他人を認め、好きになるだけでいい。

そのメッセージは決して世の働く男性だけにしか届かないものじゃない。
だから私は奥田さんの小説が大好きだ。