すべてが猫になる

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ジェシカが駆け抜けた七年間について (ねこ3.7匹)

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原書房

エチオピア人のジェシカは、アメリカのクラブチーム「NMAC」に所属するプロの長距離マラソン
ランナー。ある日ジェシカは、同じクラブの日本人、アユミが深夜に怪しげな「呪い」行為を
している所を目撃する。アユミから彼女の恨む相手とその内容を聞いたジェシカは驚愕する。
そして、クラブから脱退したアユミが数日後自殺した事を知るジェシカ。彼女は悲嘆にくれる。
彼女の為に自分がしてやれることは何か。
それから七年の月日が流れた。

※以下は読了されてからお読み下さい。ネタバレの感覚には個人差がありますが、少なくとも
 私はこれ、ネタバレです。ご注意を。







主人公がエチオピア人!そしてマラソンランナー!
また変わった事やってくれてますね、歌野さん。いつも色々手を変え品を変え読者を
楽しませてくれ、時には大成功しベストセラー、時には暴走し地雷を踏む歌野さんですが、
果たして今回はーーーー!!

ーーーーーーーーーーーーーーーえ、これ、どっちだ?^^;;;

えっと、面白かったですよ?好きですよ?
でも、これ、昨今のミステリを読まれてる方なら「これは叙述トリックだね」って
わかりますね。もう読む前から叙述のかほり漂って来ますね。 ←千里眼らしい
叙述トリック」ってわかってしまえば楽しみの半分は削がれてしまう私ですがもう
今日日これだけ叙述ものが溢れている今、そうも言ってられません。ならばと、
「どんな叙述が……!」と期待するしかありません。

※ここから堂々のネタバレです!未読の方は絶対読まないで!








微妙です、これ。
そもそも、エチオピア時間だのマラソンの主催時期の変更だの、こういう情報は一般読者にとって
フェアとは思えません。え、私が無知なだけ?伏線はあるから計算しろ?んなむちゃなー。
名前の表記や、兄弟設定や、思わせぶりなあらすじ、ミスリードを計算したオカルト部分。
読み終わるとあれもこれも全部伏線で、仕掛けで、「なーるほど」とは思えます。
しかーし!!
伏線だな、何かを仕掛けてるな。というのが丸分かりで、構えちゃうんですよ、こっちは。
せっかく良いお話なのに、トリックに気を取られてストーリーの良さやラストの哀愁が
後ろに回ってしまったのです。
読後はやっぱり、トリックが優先して頭に残ってしまう。
物語の余韻に浸れない。

失敗ではないと思うけれど。
好きは好きなのだけれど。
色々作家さんも策を労して大変だなあ、とは思うけど、
これなら、叙述にしないで普通の構成のミステリーにした方が良かったかも。
題材が良かったし、妊娠の実態などに驚きもありましたからね。

要は読む側にとってはバランスなのだ。まる。