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Yの構図 (ねこ3.5匹)

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光文社文庫。吉敷シリーズ第6弾。


昭和61年、上野駅の隣接するホームに相前後して到着した上越東北新幹線
中から、女と男の服毒死体が発見された!男は盛岡の中学教師、女はその教え子の
母親であった。2つの死体の側にはなぜか花束が…。自殺か?他殺か?
警視庁捜査一課の吉敷竹史は、不可解な事件の謎を追い盛岡へ。(裏表紙引用)



本作もまた、「北の夕鶴~」や「奇想、天を動かす」などに比べると知名度では
薄めに位置する作品。
しかし、やはりなかなか読み応えがあり吉敷シリーズとして避けて通れない秀作でしょう。
前半はまさに「トラベル・ミステリの王道」といった趣きなのですが、
あれよあれよで凄い展開になりますから気を抜かないように。

今回はいじめ問題を題材にしています。
社会派、と言い切るには自分は物足りないものを感じるのですが、
これは作者の確信的なものかもしれませんね。
どこにも属さない、島田さんの意気込み。そのスイッチはこのあたりで入ったのでしょうか。

二度目になりますが、これは昭和61年の事件を描いた作品です。
根本的な若者の苦悩を描き、彼らが最も「死に近い」年代だと島田さんは
吉敷竹史に言わせました。「何か反論はあるか?」と問いかけて来ます。
法律は改正されて行きますが、実際、現在社会は何も変わっていないのでしょうか。
ああ、この時代の風潮だ、ではなく、今の方が確実に増え、慣れてしまっている。


ちなみに、タイトルはもちろん「Yの悲劇」にオマージュを捧げたもの。そして、
「ヤング・ジェネレーション」という意味も含んでいるとか。犯行にも
関わっているこのタイトル、なかなかニヤリとさせるセンスです。

宣伝の帯の文句、私ならこう書くかな。
「吉敷竹史、大ピンチ!セクハラに遭う!」