すべてが猫になる

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幻想運河 (ねこ2.5匹)

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講談社文庫。

シナリオライターの卵、恭司がアムステルダムで遭遇したバラバラ殺人事件。
在外日本人社会の濃密で澱んだ空気が生んだ犯罪が、不思議な糸で大阪の殺人に
つながってゆく……。ふたつの水の都をいろどる、奇怪な薔薇のイメージは
なにを意味するのか?有栖川裏ミステリー・ベスト1の傑作。


↑今日のあらすじは随分文章がうまいじゃないかと思った方、ごめんなさい。
二日酔い中なので裏表紙引用しました。


有栖川作品には珍しい、ノンシリーズもの。しかも、際立ったキャラが登場
するわけでもないし、本格ミステリーでもない。異色作品と言って良いでしょう。

アムステルダムの情景は目に見えるようで、大阪という都市への有栖川さんの
描写は氏の愛情もかいま見えて幻想的でありながら少しロマンティック。
バラバラ殺人を扱ったミステリーという体裁ではあるものの、
「薔薇」という「文字」を使ってのお遊びや、小説の雰囲気を楽しむのが
本作の色、かもしれません。

このラスト、不気味な印象を与えず、綺麗なエンディングとして
読ませるのは有栖川さんだなあと思いました。プロローグをもう一度
読み返した方は多いのでは。

雰囲気は好きだけど、面白さには欠ける。
ソフトドラッグを扱っているのも、知識や見聞を広めるという読書の
メリットや楽しみという観点ではあまり興味を感じなかった。
アムステルダムでのドラッグ事情について、少し頭の隅にでも置いておくか、
というくらい。いや、単なる豆知識としてですが。

いつものように長々と書くほど良くも悪くもインスパイアされない作品だったので、
このへんで締めておかないとゆきあや狂ったかと思われかねない。

まあ、たまにはこういう作品も有栖川さん書いて下さい、といったところ。