すべてが猫になる

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木曜日にはココアを  (ねこ3.8匹)

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青山美智子著。宝島社。

僕が働いている喫茶店。必ず木曜日にきて、いつも同じ席で手紙を書く女性がいる。 そして、頼むのは、決まってココア。僕は、その女性を「ココアさん」と密かに呼んでいる。 ある木曜日。ココアさんはいつものようにやってきたのだが、どこか様子が違い……。 色とりどりのストーリーが深く交わっていく、ハートフルストーリー。(紹介文引用)
 
青山さん二冊目。「お探し物は図書室まで」がとても良かったので、評判がいいというこちらにも挑戦。
 
本作は連作短篇集となっているのだけど、字が大きめで200ページ強、12話収録されているので1つ1つのお話がとても短い。1篇5~10分もあれば読めてしまうのでは。構成としては、各話の登場人物の1人が次のお話では主役となって別のお話を紡ぐスタイルで一貫されている。視点が変われば印象も変わるので面白い。
 
正直言うと、前半の数作品に比べ中盤~後半の作品はそれほど響かなかった。悩める人が誰かと繋がり合い支えあって、それぞれの人生を前に進めていく、という作風は統一されているのだが、どれもあっさりしすぎているというか、緩急がないというか。前半の幼稚園教諭の話や家事の苦手な母親の話には人間の持つリアルな葛藤や考え方の切り替えがあって良かったのだが。あとの話はどれも、もともとがキレイというか。。いや、それ、全然悪くないし、むしろ読んでいて心地良さはあるんだけどね。まあそんなこんなでサクサク読めてしまって終わりかな~と思っていたら、最終話が1話目と素敵なつながり方をしてこれなら全てOKになってしまった。ある偶然がとても自然な形で目の前に現れたので、まとまりのある作品集になっていると思う。
 
ちょっとケチつけたみたいになったけれど、この作家さんは好みに合う。あまり本を読まない人もこういうのから始めればいいんじゃないかな。