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鳩の撃退法  (ねこ4匹)

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佐藤正午著。小学館文庫。

かつては直木賞も受賞した作家・津田伸一は、「女優倶楽部」の送迎ドライバーとして小さな街でその日暮らしを続けていた。そんな元作家のもとに三千万円を超える現金が転がりこんだが、喜びも束の間、思わぬ事実が判明する。―昨日あんたが使ったのは偽の一万円札だったんだよ。偽札の出所を追っているのは警察だけではない。一年前に家族三人が失踪した事件をはじめ、街で起きた物騒な事件に必ず関わっている裏社会の“あのひと”も、その動向に目を光らせているという。小説名人・佐藤正午の名作中の名作。圧倒的評価を得た第六回山田風太郎賞受賞作。(裏表紙引用)
 
初・佐藤正午さん。大ファンの藤原竜也主演で映画化が決まったので読んでみた。なかなかの大長編なので結構疲れたが…まあ、それは長かったからだけではないということで。
 
様々な出来事が同時進行し、時間軸に逆らい進む構成。さらに主人公・津田が自作小説の語り手となって進む章と現実の津田に起きている時間の章とがかわるがわる繰り返される。一家三人失踪事件、デリヘル嬢&郵便局員行方不明事件、津田は何に関わり実際には何が起きていたのか。津田視点を軸にして読むと、津田に起きたことを元に津田が後から想像して創作したもの、というフィクションのようなそうでないようなもの、という感じだろうか。だから津田の章を省いて実際はどうであったかは分からない。津田が読者をどう騙しているのか探るもよし。ラストで津田の手に戻った本や偽札の行方、その経緯が「こうだったであろう」という想像のもと明かされるのは気持ちがいいもんだ。
 
まあところで最初に疲れたと述べたが主人公津田が絵に描いたようなクズである。養ってくれる彼女が途切れないあたり、顔はイケメンなのであろうと推察。(イケメンでクズとなると藤原竜也の真骨頂だし)登場人物も一律まともではないキャラクターで揃えられているので、読んでいる間イライラが募った(このイライラが面白さを作っているのは間違いないとして)。津田の語りもクドイし繰り返しが多いため、まあこのあたりも好みが分かれるところだろう。
 
伊坂幸太郎ファンなら読んでみるといいかも。