すべてが猫になる

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めぐりんと私。  (ねこ3.9匹)

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大崎梢著。東京創元社

三千冊の本を載せて走る移動図書館「本バスめぐりん」との出会いは、屈託を抱えた利用者たちの心を解きほぐしていく。家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった規子の、本と共に歩んできた半生を描く「本は峠を越えて」や、十八年前になくしたはずの本が見つかったことを引き金に当時の出来事が明るみに出る「昼下がりの見つけもの」など5編を収録。めぐりんが本と人々を繋ぐ移動図書館ミステリ、シリーズ第二弾。(紹介文引用)
 
「本バスめぐりん」の続編。大崎さんは読んだり読まなかったりの作家さんなのだけど、このシリーズ?はほんわかしていて面白いのでお気に入り。今回も移動図書館「めぐりん」にまつわる人々や出来事を描いたお話が5篇収録されている。
 
「本は峠を越えて」
72歳の節子は、引っ越してきた先で久しぶりに見かけた移動図書館に足を止める。子どもの頃自分の住む町にやって来た移動図書館を懐かしく思い出したのだ…。
昔は自動車文庫と呼んでいたとは知らなかった。歓迎の横断幕、もてなしの膳、手を合わせるおばあさん…(笑)。娯楽が少なく、老若男女みんなが本に歓声をあげていた時代、いいね。でも嫁ぎ先で不妊を全部女のせいにされて離縁せざるを得なかったくだりを読むとなんなんだこの時代、とも思う。腹立ちすぎて一回本閉じた。でもそのあとの人生が幸せだったみたいで良かった。三兄弟いいなあ。
 
「昼下がりの見つけもの」
仕事が続かず実家にUターンしてきた27歳の優也。ある日天袋から出てきた1冊の本。それは子どものころ、返却したはずが紛失した移動図書館の本だった。その本がなぜここに?
父母のアレコレ問題はウメちゃんテルさんに聞くまでもなく想像がついたが、優也の憤りは同じ本好きとして分かるな。似てないと思っていた兄とのやり取りもいい。
 
「リボン、レース、ときどきミステリ」
会社の購買部に勤務する派遣社員の佳菜恵。ある日いきなり営業部の青年に声をかけられ、ランチを共にする仲に。彼はミステリ小説が好きで、移動図書館を利用している佳菜恵を仲間だと思って声をかけたというのだ。しかし佳菜恵はミステリどころか小説をあまり読まず、それが言い出せないでいた。
佳菜恵が実際にミステリを読むようになったのが好印象。こういうのの本質って知識とか読書数とかじゃないんだよね。しかし「十角館~」「ツナグ」はともかく、他の3冊って結構ミステリ好きでも好みがハッキリ分かれると思うぞ。「しじんそうのだいじけん」に大笑い。
この2人、付き合うのかなあ。お似合いだよね。
 
「団地ラプンツェル
やもめの征司は、めぐりんの前でかつての同級生・大悟と再会した。同じ場所で再来週の再会を約束するも、大悟はその場に現れなかった。連絡手段を持たない征司の前に、大悟の住む部屋を知っているという小学生コンビが現れるが…。
小学生の考えた暗号、謎解き、いいねえ。老人と子どもの小さな冒険という感じ。ウメちゃんとタケさんが謎を解くわけじゃないけれど。
 
「未来に向かって」
めぐりんの裏方業務をこなす典子は、かつて自分が司書を目指すきっかけとなった移動図書館職員が担当する「ほんまる」の廃止を知って動揺する。
色々と司書の仕事内容が分かって面白かった。低賃金だろうし1人に任される業務量が多そうだけど、夢を諦めなかった典子えらい。
典子と三ツ木さんが再会するシーン読みたかったな。
 
以上。
前作より好きなお話が多かった。移動図書館は利用したことないけど、子どものころウチの社宅に来てたからバスの中に乗って本の背表紙を眺めたことはあるかも。あのワクワク感って一体なんなんだろうね。図書館がなくなることは当分ないと思うけれど、移動図書館は綱渡り状態だろうな。。