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冥談  (ねこ3.8匹)

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京極夏彦著。角川文庫。

 

庭に咲く艶々とした椿の花とは対照に、暗い座敷に座る小山内君は痩せ細り、土気色の顔をしている。僕は小山内君に頼まれて留守居をすることになった。襖を隔てた隣室に横たわっている、妹の佐弥子さんの死体とともに。しかしいま、僕の目の前に立つ佐弥子さんは、儚いほどに白く、昔と同じ声で語りかけてくる。彼女は本当に死んでいるのだろうか。「庭のある家」をはじめ、計8篇を収録。生と死のあわいをゆく、ほの瞑い旅路。(裏表紙引用)

 


京極さんの現代怪談シリーズ第2弾。京極さんの本とは思えないほどの薄さだけど数々の怪談が収録されており恐怖したい心を満足させてくれる。

 

「庭のある家」
休職中の教師の家を訪ねてきた青年の不思議な体験。先ほど亡くなったはずの、教師の妹が現れる。それにより自身の生存を危ぶむあたりが最も恐怖。

 

「冬」
10家族ほどの親戚が集まっていた豪農の家。「僕」は、少年時代の自分の体験を想い返す。「穴の部屋」から覗く左頬だけ見える少女、ってコワすぎ^^;前作にもベッドの下に奇妙なのいたけど、こういうのどうやって思いつくんだろ。

 

「凮の橋」
「かぜのはし」と読むらしい(「つくえ」、「百」、漢字。でググった。普通に「かぜ」で変換すると→「凬」こっちが出ちゃうので。)市史編纂委員会の集まりに通う女の恐怖話。大学時代、教授と不倫関係にあった女。その教授が亡くなって。。京極作品で現代の不倫話が読めるとは。

 

遠野物語より」
男3人で語りあう怪談話。死んだ女が生きて現れるのは幽霊ではないというくだりが興味深かった。

 

「柿」
子どもの頃、空き家の庭に忍び込んで柿の木を眺めた男の話。天辺にあるいつまでも朽ちない柿の実よりも窓から覗く「黒婆」のほうが怖い。どんだけ黒いんだ。木を倒さなかったのは何故?

 

「空き地のおんな」
ろくでもない恋人と酷い口論をして家を飛び出した女の体験。完全なる現代文で新鮮。空き地の誰か分からないおんなの存在も怖いがその高さの違和感が人間でない証明なのかなあ。

 

「予感」
古い家を修繕して住む男の家語り。なんの根拠もない、家に対する怖いものへの「予感」という言葉が繰り返されて...それだけでもう何かが起きている気分になる。

 

「先輩の話」
「先輩」が語る戦時中の祖父母の物語が泣かせる。実話というものはほんとうのことじゃなくほんとうのことの「話」だという1文になぜだか頷いた。


以上。全体的に小粒だが、この短編集のシリーズは読みやすくそれでいてちゃんと怖いので良いな。個人的に前作より好みのお話が多かった。