すべてが猫になる

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世界で一つだけの殺し方  (ねこ4匹)

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深水黎一郎著。講談社文庫。

 

10歳の少女が両親と訪れたのは、不思議な現象が次々と起こる街だった。そこで奇怪な殺人事件が。(「不可能アイランドの殺人」)動物園でのピアノ・コンサートの最中に象が暴れ出し、飼育員が死亡した。事故と思われた出来事の、驚くべき真相とは?(「インペリアルと象」)2つの怪事件に「芸術探偵」が挑む! (裏表紙引用)

 


深水さんの文庫新刊。2編の中編が収録されている。面白そうだったので順番すっ飛ばして読んでみたんだけど、これどっちも神泉寺瞬一郎シリーズだったのね。思わぬ僥倖。

 

「不可能アイランドの殺人」
10歳のモモちゃんが語り手となった物語なので、ジュブナイル調。モモちゃんがパパとママに内緒で連れられた場所は不思議な現象が次々と起こる街で――。
人がカメハメ波みたいな技を出したり噴水の水が空中でゆっくり動いたりとまるで魔法の国のよう。モモちゃんは難しい言葉を使いこなせるなど大人びたところがあって、なんだかこの話自体が全部嘘っぽい雰囲気を持っている。そんな雰囲気と殺人事件というのがアンバランスで、かえってそこが個性になっているかも。立て板に水で瞬一郎が立てた論理を代弁するモモちゃんにビックリした(笑)。

 

「インペリアルと象」
舞台がタイから始まる物語で、象使いの少年と日本から来た少女との心の交流がとてもいい。しかしそのプロローグが、動物園で開かれるピアノ・コンサート殺人事件とどう結びつくのか?深水さんらしく蘊蓄たっぷりで楽しめる。ストーリーにもグっと来たけど、本書のねこ点はほとんどこのピアノ蘊蓄に捧げてしまった気がする。それぐらい面白かった。


以上。「インペリアルと象」のほうが圧倒的に好きだし深水ワールドの本領発揮という感じ。深水さん久々に読んだけど熱が高まってきた!未読の文庫揃えてこよう。