すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

晴れた日の森に死す/Den Som Frykter Ulven (ねこ2.8匹)

イメージ 1

カーリン・フォッスム著。成川裕子訳。

 

ノルウェーの森の奥で老女が殺害される。被害者の左目には鍬が突き刺さっており、精神病院に入院中の青年エリケが現場で目撃されていた。捜査陣を率いるセイエル警部は、エリケを犯人と決めつける者たちの偏見に左右されず、冷静に証言を集めていく。だが信じがたい事実が判明。エリケは銀行強盗に巻きこまれ、逃走する強盗犯の人質になっていた。ガラスの鍵賞受賞作家の代表作。(裏表紙引用)

 


ノルウェーミステリ。作者のカーリン・フォッスムは「湖のほとりで」という作品でガラスの鍵賞、マルティン・ベック賞を受賞している。

 

ストーリーは至ってシンプルで単純だが、登場する人物がそれぞれ癖を持っている。森に住む老女が殺害され、エリケという精神病患者の少年が犯人だと証言した人間は少年院に入っているちょっと風変わりな少年だった。さらに、主人公セイエル警部が居合わせた銀行強盗犯が人質に取ったのはそのエリケだということが判明し・・・というお話。

 

一見刺激的で魅力的な謎なのだが、雰囲気勝ち、その一点だけの物語だった。銀行強盗犯(モルガン)と殺人犯が一緒に行動しているなんて捕まえるほうは手間がはぶけていいなと思うし。しかしモルガンとエリケの逃亡劇にはあまり緊迫感は感じられないし、肝心の老女殺しの真相も意外性がない。セイエル警部は優しく聡明ではあるがそれほど我を出すタイプではないようで、恋愛要素があっても思い切った進展がない、のないない尽くし。

 

納得したのだが、聞けば20年以上前の作品なのだという。正直、なぜこの作品(しかもシリーズ3作目だという)を創元社が今出版しようと思ったのか疑問が残った。世間評価は悪くないようなので、自分に合わなかったとしか言いようがないが。なんでもかんでも北欧ミステリと聞いては手を出す癖があるもので、そりゃこういう時もあるよね。