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フェッセンデンの宇宙/Fessenden's Worlds (ねこ3.8匹)

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 史上最高の科学者フェッセンデンが実験室の中に宇宙を創った!世界中の言葉に翻訳された、名作中の名作「フェッセンデンの宇宙」をはじめ、代表作「向こうはどんなところだい?」「翼を持つ男」、切ない怪奇小説「帰ってきた男」、ショート・ショート「追放者」、さらに本邦初紹介作として「風の子供」「凶運の彗星」「太陽の炎」「夢見る者の世界」の4篇を含む、全9篇を収録。(紹介文引用)

 

 

久々に奇想コレクションをひとつ。グレッグ・イーガンが自分的にヤバかったのでビクビクして手に取ったのだけれど、この作品集は今までに読んだ奇想コレクションの中でも1、2番目に読みやすかった。あー良かった(笑)。ナント80年ほど前に描かれた作品ばかりだそうで、とてもそうは思えないものばかり
でビックリ。

 

「フェッセンデンの宇宙」
一番面白い表題作を1編目に持ってくるあたりさすが。人工宇宙を創り出し、神のごとくそれぞれの星に手を加える姿は悪魔にも見える。これを読んで思い出したのは、星新一氏の「おーいでてこーい」だった。

 

「風の子供」
風を擬人化した物語。風が生きていると信じている少女とそれを信じさせまいとする男の、風世界からの「駆け落ち」。なかなかホロリと泣ける。冷酷、クールな世界かと思い込んでいたもので。

 

「向こうはどんなところだい?」
火星から帰って来た男。あらゆる人に同じ質問を受ける。理想と現実は違うが、それをそのまま伝えることが出来ないその葛藤が面白い。

 

「帰ってきた男」
仮死状態で埋葬された男が棺から蘇った。妻や子、友人。信じていた者に裏切られる哀しみと、彼が最後に取った行動にゾワワ。それほど悪い人じゃなさそうに見えたけどね、このお話では^^;

 

「凶運の彗星」
脳以外は機械で出来た人間と、彗星人の侵略を描いたもの。この作品は頭に入って来なかった、すまそ。

 

「追放者」
SF作家同士の雑談だけで描かれたショートショート。こういうの好き。自分が今いる世界が思っているものと違ったら?と考えるとゾッとするかも。

 

「翼を持つ男」
タイトル通り、翼を持って生まれた男のお話。奇形として、空を飛ぶ喜びを噛み締めて自分のままに生きるか、愛を取るか――。当然こういう結末になると思ったものの、どちらが幸せなのかはわからないな。愛に目覚めた以上、そう生きていくのもアリだと思うんだけど。

 

「太陽の炎」
宇宙から帰ってきた男は秘密を抱えていた。宇宙の「昼側」と「夜側」を知ってしまった男は人生観が変わってしまったように見えて――。

 

「夢見る者の世界」
夢の自分と現実の自分。2人の自分がもしいたら?そして本当の自分はどっち?というお話。どちらも具体的で継続的なので本当がよく分からない。夢が現実になったら怖いっていうのはよくあるけれど、さてどっちが本当なのか。

 

以上。小難しいお話がほとんどなかったので、初奇想コレクションにはオススメ。文庫化もされているようなのでこの機会にぜひ。