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カリブ諸島の手がかり/Clues of Caribbees (ねこ3.8匹)

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T.S.ストリブリング著。倉阪鬼一郎訳。国書刊行会

 

南米の元独裁者が亡命先のキュラソー島で食事中、ホテルの支配人が毒殺された。休暇で西インド諸島に滞在中のアメリカ人心理学者ポジオリ教授が解き明かす皮肉な真相「亡命者たち」。つづいて、動乱のハイチに招かれたポジオリが、人の心を読むヴードゥー教司祭との対決に密林の奥へと送り込まれる「カパイシアンの長官」。マルティニーク島で、犯人の残した歌の手がかりから、大胆不敵な金庫破りを追う「アントゥンの指紋」。名探偵の名声大いにあがったポジオリが、バルバドスでまきこまれた難事件「クリケット」。そして巻末を飾る「ベナレスへの道」でポジオリは、トリニダード島のヒンドゥー寺院で一夜を明かし、恐るべき超論理による犯罪に遭遇する。多彩な人種と文化の交錯するカリブ海を舞台に展開する怪事件の数々。「クイーンの定員」にも選ばれた名短篇集、初の完訳。(紹介文引用)

 


世界探偵小説全集15。
この全集に、短編集があったとは。しかも訳がとても読みやすい倉阪鬼一郎氏(゜д゜)。この心理学者兼大学教授のポジオリは初対面だったが、論理的な分析を得意とし、世界にも名だたる名探偵。運動が苦手で時に自分の分析によって悩むぐらいしか性格的な特徴は見い出せなかったが、その頭脳は確かなようだ。色々と旅して周って度々事件に巻き込まれている模様。

 

「亡命者たち」
ワインで毒殺されたホテルの支配人と、ベネズエラを追われた独裁者の関係は?支配人の娘が取った些細な行動が事件にどう結びつくのか。人間心理を読み取った推理方法で犯人を当てるポジオリ、証明するために猫を殺してしまいますΣ(゚д゚;)

 

「カパイシアンの長官」
アメリ海兵隊に支配されたハイチにて。反乱の指導者の呪術のイカサマを暴くために呼ばれたポジオリ。身分の差や人種差別が顕著で、聞き込みに苦労するなあ~。危険地帯に足を踏み入れるポジオリ、どうやら運動は苦手なようだ。

 

「アントゥンの指紋」
建築物が犯罪にどの程度影響を及ぼすか――。知り合いになったフランス人と議論となったポジオリは、この街で起きた金庫破りの真相を追及することとなった。時代というのか土地柄というのか、犯人が現場でタバコの吸殻を21本残している(笑)。しかも指紋を残している(笑)。もはやバカミス。しかし真面目な話、この方法では指紋は付かないんじゃなかったっけ。

 

クリケット
クリケットの試合中に亡くなった青年。その父は、ポジオリに息子を殺した男が島から逃げるのを手伝えと言う。調べるうち、青年が投機で負け続けていたことが判明する。しかし、18回連続で負けるなんてことがあるだろうか――。最初は単純な事件と切って捨てていたポジオリだが、人間関係がなかなか複雑で手を焼いてしまった。それにしてもこの短編集、必ず犯人海へ逃げるなあ(笑)。

 

「ベナレスへの道」
ヒンドゥー寺院で寝泊りをしたポジオリだが、そこで結婚式を挙げた新婦が新郎に殺された事件の容疑者となってしまう。物凄く宗教色が強い作品だが、ポジオリは最後まで論理で勝負する。このラストシーンには度肝を抜かれた。変な作品だと位置づけられているのはこれ故か。全ての作品の記憶が吹っ飛ぶんじゃないか、最後の1ページで。


以上。
色々書いたがそれを含めてなかなか気に入った作品集。何かに挑戦しているものはやはり好きだ。旅行気分にも浸れたし、タイムスリップした気持ちにもなれるかも。人種や時代がこれだけ違うと、犯罪者のみならず人々の行動や心理は理解不可能、それをまるごと楽しめるなら大いにオススメ。文庫化もされているよう。