貫井徳郎著。新潮文庫。
一面識もない財界実力者に呼び出された青年ジュアン。訪れたミハスの地で明かされたのは、亡き母の記憶と、30年前に起きた密室殺人の真相であった。スペインを舞台にした表題作他、憧れの女性に裏切られ、殺意を抱いた男が予期せぬ殺人事件に巻き込まれる「ストックホルムの埋み火」など5編。本格ミステリ、警察小説、そして驚愕のどんでん返し。貫井徳郎の全てが詰まった短編集。(裏表紙引用)
全ての作品の舞台が外国という貫井さんの挑戦が詰まった短編集。もちろん登場人物も外国人だが、いわゆる「翻訳もの」のような文章のぎこちなさはもちろんなく、「偽翻訳もの」でもないのでご安心を。すらすらと読みやすい文章と先を読ませる展開のうまさはさすが貫井徳郎といったところ。
「ミハスの落日」
一編目ということで、自分のこの作品の「読み方」も決まっていなかったので、文学のような気分で読んだ。実際は密室殺人ものだったのだが、まさかこれが真相とは思わずにサラっと読んでしまったほど
^^;でもまあ雰囲気を楽しめるのでいいと思う。
「ストックホルムの埋み火」
ビデオレンタルショップの店員が、客である美女に恋をしてそこからストーカーに発展し事件が発生するお話。ずいぶん刑事のキャラを掘り下げているし人物関係が入り組んでいて面白いと思っていたら、
事件の真相とまた別に驚愕の仕掛けが用意されていた!最後の2行で一瞬自分の時間が止まって、「ああ!おお!そうだったの!」と膝を打つ。これ、海外モノに弱い読者は意味がわからないかもね。と言いながら自分も実際にまだ読んだことはないのだけど。さすがに名前と名声ぐらいは知ってる。
「サンフランシスコの深い闇」
保険調査員の主人公が、ある極悪刑事の頼みを断れず殺人の疑いのある案件を調査するお話。それほど衝撃の真相ではないのだけど(そう思えてしまうのもなんだか悲しいね)、確かにこういう女性って居るよね。変な男ばっか掴んでしまうというか。
「ジャカルタの黎明」
インドネシアの娼婦が語り手。最近発生している娼婦殺人事件に怯えるディタは、ある日客としてやって来た日本人男性に好意を持ち始める。。。境遇は気の毒だと思うけど、、全ての行動が自分から地雷を踏みに行ってる気がする、ごめん。真相は「エーっ」て感じだけど因果応報ってことでまとまってはいるなあ。
「カイロの残照」
カイロのツアーガイドをやっている主人公は、ある日引き受けた美女のガイドの不穏な頼みに首を振ってしまい。。。あのさあ、さすがに5編目ともなると、この私でも真相は早々に読めた^^;だいたいこういう手法で続いてるから。。動機だけはさすがにわからなかったけど。しかしカイロの男性って大変なのね。
以上~。
貫井さんの解説がたっぷりついていて(実際に現地に取材に行かれたそう)親切。ずいぶん楽しまれたご様子^^貫井さんは身長が高いおかげで日本人とばれなかったのだとか。それはそれとして、全体的に自分好みの作品集。ぜひまた第二弾をお願いしたいな。