すべてが猫になる

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戦慄のシャドウファイア/Shadowfires  (ねこ3.5匹)

ディーン・R・クーンツ著。扶桑社ミステリー文庫。

エリック・リーベン=天才的な遺伝子工学者。彼はその才能を武器にベンチャービジネスを成功させ、莫大な財を築いていたが、別居中の妻レイチェルと口論した直後、自動車にはねられて即死した。しかし、奇怪なことに彼の死体が、死体公示所から忽然と消えた!恋人ベンとともに極秘の調査を開始したレイチェルの前に、謎の追手がたちふさがる。一方、エリックが手がけていたプロジェクト<ワイルドカード>の機密漏洩を恐れる情報局のシャープも二人の追跡を開始した。鬼才クーンツが放つ、超大型サスペンス!(上巻裏表紙引用)



クーンツの上下巻もの。なかなか恐ろしげな邦題で5、6年前から気になっていたもの。大長編となると今までのクーンツのパターンにプロット追加でなかなか読み応えがある。レイチェルがエリックから逃げるってだけじゃ持たないものね。敵は化け物だけじゃないってところがよくあるサイコサスペンスと趣きが同じになっていて、単なる軽いエンタメとしてクーンツを求めている自分のような読者にはそれがちょっとした試練になってしまったけど。視点まで変わってしまうから、純粋なホラーの雰囲気が削がれているというか。個人的にバイオ系?苦手ってのもある。どうもホラーに理論が入っちゃうとワタクシダメなのだ。

で、肝心の化け物「エリック」についての描写。コレはすごい。ああやっぱりホラーだったと思うぐらいすごい。身体が溶けるからね^^;最初は人格が恐い、ってイメージが強かったエリックがもう人名では呼べないだろこれ、というぐらい進化してしまう。蛇を食べるところとかもう映像が浮かんじゃって^^;せっかく目立って来たDSA副長官・シャープの存在が最後には化け物に主役の座を返しちゃった感じ。

まあしかし、下巻でやっと雷鳴が轟くし(クーンツには雷鳴がないと、笑)、ラブロマンスの要素も手を抜いていないあたりやっぱりクーンツ。でもクーンツの話のまとめ方はいつも同じだから、こういう本格長編ぐらいは意地悪などんでん返しの一つ二つ欲しいなーと思った。ハリウッド映画だったら、「ラストが残念」な結末の部類になっちゃうのでは。