すべてが猫になる

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エンダーのゲーム/Ender's Game  (ねこ4.2匹)

オースン・スコット・カード著。ハヤカワ文庫。

地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。捕らえた人間を容赦なく殺戮し、地球人の呼びかけにまるで答えようとしない昆虫型異星人バガー。その第三次攻撃にそなえ、優秀な司令官を育成すべくバトル・スクールは設立された。そこで、コンピュータ・ゲームから無重力戦闘室での模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最優秀の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描く、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の傑作。(裏表紙引用)


遂にこの名作を読み終え感無量。平仮名多いけど想像してたより読みやすいね。どこ見ても翻訳がヒドイって書いてあったけど、アホな自分にはナニが悪いのかさっぱりわかんない。。。

で、内容はバガー星人との交戦にあるのかと思っていたら、この長い物語の中で占められているのはほとんどがバトル・スクール内の模擬戦闘とエンダーの心身ともの成長だった。読みやすいのはこのあたりに原因があるか?な?兄、姉、そして第三子(サード)として生まれたエンダーは、抜擢された通りに期待以上の成長と昇進(?)を見せる。最初はデキるがゆえに、小さいがゆえに苛められ疎外されていたエンダーが、やがてリーダーとなり上級学校へ。ほとんどがバトルを通じての意思疎通や心境の変化で物語が進んで行く。それとほぼ平行して綴られるのが、エンダーの故郷で待つ兄と姉の動向。コンピュータを駆使して、政治フォーラムや会議に偽名で参加し、世界を動かし続けて行く。これは80年代の作品だそうだけど、「書き込み」でここまで大人を操作するというのが斬新だね。兄のピーターのとんでもない悪の個性と、姉の愛が対極していながら、エンダーという共通点を持って力を合わせて行くのがドラマだね。


この物語が「倫理的にどうか」という議論に乗せられている理由は、怒涛のエンディングで明らかとなる。目が点とはまさにこのこと。こんなのアリ?だからこそもちろん姉もエンダーもここでは終われない。壮大という言葉では表し切れないほどの、「世界」の物語は、一人の天才少年からまた始まるのかもしれない。


(529P/読書所要時間4:00)