シリル・ヘアー著。国書刊行会。世界探偵小説全集6。
「ウォーベック邸に神のご加護を!」クリスマスを言祝ぎ、シャンパンを飲み干した青年は、次の瞬間その場に倒れ伏した……。雪に降り込められたカントリー・ハウス、一族を集めたクリスマス・パーティーの夜、事件は起った。病の床につく老貴族、ファシストの青年、左翼系の大蔵大臣、政治家の妻、伯爵令嬢、忠実な執事と野心家の娘、邸内には事件前から不穏な空気が流れていた。地域を襲った大雪のため、周囲から孤立した状況で、古文書の調査のため館に滞在していた歴史学者ボトウィンク博士は、この古典的英国風殺人事件に如何なる解決を見いだすか。「クリスティーの最上作を思わせる」傑作と呼び声高い、英国ミステリの伝統を継ぐ正統派シリル・ヘアーの代表作。(あらすじ引用)
うん、英国風です(笑)。
貴族の特権が廃止され、先進的な民主主義国家となった時代の英国民らしさが際立った、タイトルに恥じない作品。つまり、平等主義と銘打ちながら貴族の階級意識はまだ根強く残っている人々を中心に
物語が作られています。舞台はマークシャー州という架空の土地になっておりますが、イメージ的にはイングランドだと思いますです。探偵役がイギリス人ではない(ボトウィンク博士)ので、客観的に英国を見つめられる人物として活躍します。多民族国家なので違和感というほどでもないかなと。正直言って、これイギリス人でも理解出来ます?って思ったぐらい密度の濃い英国アピール作品で(;^^A。この真相、この時代の政治システムや歴史の知識はそこそこ要るぞこれ^^:
まあそうは言いつつ、解決を読むまでは普通に楽しめました(笑)。
いかにもな正統派ミステリーのスタイルで、典型的な舞台装置が施されています。第一の事件が起きるまでに100ページくらいあるので^^;人々の確執やしがらみ、見栄が描かれていて、雰囲気は満点と言っていいでしょう。事件発生時のリアクションが淡々としているのもらしくていいかも。盛り上がるのは身分の逆転劇や動揺するセレブ達の感情のぶつかり合い、執事と娘の天然120%のうさんくささです。ミステリ的にはトリックらしいトリックも、検証らしい検証もナンニモナイのであっさりしすぎているかなー。。いくら隔絶された空間と言ってもね。
読みやすさといい、雰囲気的には好きなほうなので残りの4作も読みたいと思います。しかしさすがに「クリスティーの最上作を思わせる」の一文には殺意をおぼえました。。。
(245P/読書所要時間2:30)