西澤保彦著。文春文庫。
ここはどこ?何のために?世界中から集められ、謎の<学校>で奇妙な犯人当てクイズを課される<ぼくら>。やがてひとりの新入生が<学校>にひそむ”邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲うーー。驚愕の結末と周到な伏線とに、読後、驚嘆の吐息を漏らさない者はいないだろう。傑作ミステリー。(裏表紙引用)
これは良かったなあ。初期のSF西澤作品を彷彿とさせるグローバルな雰囲気と、独特の機械的なシチュエーション。この学校が海外なのか日本なのかも定かじゃないし、その目的も存在理由もわからない。疑問を感じた生徒たちがディスカッションし、エスパー養成所ではないかバーチャルリアリティではないかと推理を巡らせる。そして起こる連続殺人事件のたたみかけを過ぎると、宣告通りの驚愕の真実が待ち受ける。
※ネタバレという程ではありませんが、以下↓未読の方が目を通されると本作の楽しみを削ぐ可能性があります。ご注意下さい。
ここで何を驚愕したかと言うと、ほぼ同時期に刊行された某氏の出世作と同じネタだった事。仕掛けそのものの性質が異なっているとは言え、間違いなくミステリ読者は気付くだろう。自分も含め、うちのお仲間さんでも某作を読んでいない人は思い当たらない程の有名作だ。よくこんな勇気があったなと思ったが、執筆されたのが同時期であり刊行された順序がこちらは運悪く後だったとのこと。某作が存在しなければ、ちょっとした話題作となっていたのではないだろうか。
ただ、それでもミステリ読者が喜び賞賛するのは某作のほうだろう。こちらはその設定の独特さとメイン以外の謎が通常レベルであるだけに好き嫌いが分かれるだろうし、某作と同じくメイントリックでありながらも他の謎があるために興味が分散し、伏線の数も桁違いだ。
しかし、ネット書評では某作との類似を指摘しながらもこちらも好評のようす。某作を実はあまり好きではない自分としてはちょっと安堵してみたりする。こっちの方が好きだなんて邪道なんだろうしね。