森見登美彦著。角川文庫。
私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の
小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、
なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!
さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春
ストーリー。(裏表紙引用)
やっと購入^^v5冊買って、もちろん最初に着手さ~♪
評判が良かったのでかなり期待値が高かったのです。本書は作風が「太陽の塔」寄り。
ダメな大学生のダメダメライフ、という一見新鮮ではないものなのですが。
主人公が入会を迷った4種類のサークル。あの時どれを選んでいても結局同じ運命を辿るんだよ~、
という4つの並行世界が繰り広げられています。これは今まで読んだ森見本にはなかったものですね。
2話目で「あれ?さっき読んだぞ?」という文章が登場するので戸惑いましたが、なるほど、
面白い事やってますね。冒頭の自己紹介や、「好機、好機」と連発する占い師の老婆、
鴨川に大量発生する蛾などなど。明石さんや師匠、小津との出会い方は微妙に違い、
小津の骨折に至る経緯もなんとなく違う。
同じアパート、同じキャンパス内だもんね。こうなるんじゃないかとどれも思ってしまうのが
面白い。これが、”違う就職先””違う結婚相手”というシチュエーションであれば、
全く人生は違って来るんじゃないかと思うんですけど。だけど、人間が同じであれば
幸福のレベルや個人の生活の意識はたいして変わらないのかなあ。とまで考えられたり。
誰でも、「あの時あっちを選んでいたらどうなったか」という状況に遭った事はあるかと
思います。ゆきあやは、180度違っていたかも、と思うタイプなんです。。。悪い方に
向かったものに限ってそう思うのでズルいかもしれませんが、全ての事って繋がってるじゃ
ないですか。生活レベルも、交際相手も、健康状態も。それを目の当たりにして来たから、
「もしあそこがそうじゃなかったら」と思うと想像では違ってしまうに決まってるんですよ。
説得力、というハナシになってしまえば、本書は根本的なところですごく真っ当なんですね。
要は、”自分で選んだものかどうか”が決定的な違いなのかなって。
他人の影響が大きい事態である場合と、自分で選択した場合での現状の清々しさというのか、
それが全く違う。若者の、”そうなったらそうなった時”という無責任さは嫌いだけど、
自己責任で動いた場合の行き着く先は一つなんだっていう。
まあ、この主人公は”流され型”なので^^;結局は最初の決断が命だよね。
今回は、技術的に良いと思えた作品でした^^ちょっとモリミー天才かもって思っちゃったよ。