すべてが猫になる

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クドリャフカの順番  (ねこ3.8匹)

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米澤穂信著。角川文庫。


待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を
作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれた
ものは碁石、タロットカード、水鉄砲ーー。この事件を解決して古典部知名度を上げよう!目指すは
文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むために……。大人気
古典部>シリーズ第3弾!(裏表紙引用)



なぜおいらがいつまでも「遠まわりする雛」を読まないか理由を知っていたかい。
この3作目をまだ読んでいなかったからさ。。。そろそろ文庫出るんじゃないかと思っていたら
案の定。ウホホvちなみに、購入した大阪一でかい本屋での文庫売上ランキング10にこれが
入っていたよ。ちなみに1位のやつも買ったよ。


ところで、おいらは一応ホノブのファンだし書庫もあるが、この<古典部>シリーズだけは
ブログ開設後に読んだにも関わらず今まで記事にしていない。第1弾は特に何も書く事がなかった
のと、第2弾は文句ばっかりになりそうだったからだと思う。。
そういうわけで思い入れが薄い上、記事にしてないので前2作の感想どころか内容をまるっきり
覚えていない。「省エネ、省エネ」と豪語する少年が主人公だった事ぐらいしか記憶にない。
そんなこんなでどうなるやらの第3弾。
これがまた、意外にも凄く楽しめた。シリーズを飛ばし読みしている人と同等の人間のはずだけど
別に人間関係に混乱したり、人物造形に不満を感じたりする事もない。これは自分がホノブ世界に
免疫があるため、勝手にそこを頭で補っているところが大きいに違いない。

多視点構成なのが良かったのかも。特に千反田さんのキャラクターがとぼけすぎていて
笑えるし、白熱するMANGA論はなかなか大人の自分が読んでも興味深い。ふくちゃんのホータローに
対する微妙な友情も物語に利いている。
逆に残念だったのは、主人公=一番目立つはずのホータローがこの多視点ゆえにあまり存在感が
なかったこと。やはりここは一応前作を読んでいる人間として彼が主人公であり探偵役である、
という役割を承知しているからいいが、3作目から読まれた人には果たしてどうか。
結局は、ミステリーの謎解きとしてはあまりパンチがなかったことが痛い。
人が犯罪に巻き込まれ、その副次的な謎として盗難事件が発生するならばいいが、これだけの
謎ではやはりこの解決では物足りない。

だからこそ、文化祭の楽しさ、雰囲気がまるまる伝わる、こういう物語にしたのかもしれないが。
おかげさまで関係のない贅肉部分が面白く読め、評価の高さに繋がった。

ところで、副題が『Welcome to KANYA FESTA!』と文庫で変更されている。単行本ではたしか
『十文字事件』だったと思うが、文庫版の副題の方が内容を表す上では素敵だ。出来れば、
もっと大きな文字にして欲しかったけど。