すべてが猫になる

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先生と僕  (ねこ4匹)

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坂木司著。双葉社


晴れて大学生となった伊藤二葉こと<僕>。彼は大のミステリ嫌い。特技と言えば、「見たものを
一瞬で記憶する」能力。そんな僕と、ミステリマニアの中学生・隼人が手を組んだ!
「あなたのまわりのちょっとした事件。先生と僕が解決します」!!五話収録の連作短編集。



掴みはいきなりOK。設定の強引さは「ワーキング・ホリデー」に共通するかも。突然公園で
話しかけられた大学生が、その中学生の「なんちゃって家庭教師」に抜擢されるというなかなか
愉快な設定。突拍子もない申し出にびっくりして逃げようと勢いよく立ち上がった僕に、隼人が
「そんなにバイト探してたんだ!」ととぼけた「ボケ」を返したシーンでもうキマった。

坂木さんのキャラ作りの完成度は今回も大満足の出来。
ミステリが大好きで、ルックスはジャニーズという隼人君は「探偵」キャラと見せかけて、
実は「犯人」キャラという悪魔的ユーモアがキラリと光る。
いっぽう、そんな隼人のキャラに喰われてしまいそうな二葉もなかなかのくせ者。
エレベーターに乗ると「落ちる」と決めてかかったり、悪い妄想が果てしなく続く
彼の極端さは一種の才能であり、むしろあんたミステリ好きだろ!と言いたくなる
素質満点のお兄さんなのだ。


今回は珍しく「泣ける」お話がなかったのは残念だけど、こういうお話を「サラリ」と
書けてしまう実力派になった坂木さんがただそれだけで嬉しい。
連作らしく、ラストに必ず「先生オススメのミステリ」を持って来るところも
ワザが効いている。くそぅ、これおいらも全部読んでたらもっと感動したのに!

もっともっと読みたかったな。この二人の関係がもっと深まって欲しかった。
この二人のキャラクターは人気出そうだけど、シリーズにはならないのかなあ。。