有栖川有栖著。講談社ミステリーランド。
「推理作家にどうしてもなりたい12歳」秀介は、「刑事になりたくてしょうがない12歳」優希に
招待されて彼女の出身地・虹果て村へやって来た。虹果て村の虹のふもとには財宝が眠っているという。
そんな神秘的でのどかな村だったが、現在高速道路建設問題で反対派と賛成派に住民の一部が
二分され険悪な状態であった。そこで起こった密室殺人事件。秀介と優希は犯人捜しを開始する!
お~っと、これはいい。凄くいいぞ。ミステリーランド、久々のヒット作に当たりました。
設定と作風共にいかにも有栖川さんらしく、ロジックが冴えるドラマが光る。
秀介君のキャラは絶対有栖川さんがモデルだ。優希ちゃんは氏の初恋の女の子がモデルだったりして。
事件、密室トリック、犯人共に普通に考えると目新しくもなんともないが、
そこが長所となり得る作品、と感じたのは自分だけではないだろう。
子供向けにミステリーの「入り口」として考案した基本的なトリックながらも、
その真相に至るまでの論理だけはしっかりしている。
ミステリ大好きな秀介君が多方面でマニアっぷりを発揮するユーモアも好感度は高い。
何よりも、辛さも乗り越えた二人の少年少女の思い出として、最後にはしみじみと
余韻を味わえるのがいい。まさに心のあるミステリーだ。
お子様にもぜひどうぞ。
個人的に気に入ってしまったとして照れつつ萎縮しながら褒める事の方も多いこのシリーズ。
久々に堂々と「これは良かったです」と言えるのが嬉しい。
もちろん好みでなかった方はいるだろうし、作風からして「本格ミステリが好きなあなたに」
という条件で推すのが正しいかもしれない。
でも「ミステリー」、ランドだから堂々でいいか。