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吸血の家 (ねこ3.7匹)

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講談社文庫。

二階堂蘭子シリーズ第4弾~。
初稿は本作の方が先だということですが、時系列でいうと「地獄の奇術師」より
後なので読む順番はそんなにこだわる必要はなさそうです。


江戸時代。遊郭を営んでいた旧家に伝わる、「血吸い姫」の呪い。
雪の中、加害者の足跡だけがない殺人は迷宮入りとなった。


そして、狂死した姫の怨霊祓いの夜、2つの殺人事件が起きた。
「密室」と「足跡のない殺人」は当時の殺人を彷彿とさせ、血吸い姫の血筋である
雅宮家は恐怖におののく。
美しい三姉妹に降りかかった惨劇の真相を、蘭子は看破できるのかーー。


初作品だけに、「地獄の奇術師」でうざいと思っていた注釈がまた
違う体裁で復活しています。章の最後に纏められていて、
うざい人は読まなくてすむように配慮されてますね。
しかし、単なる注釈とは言えず、事件を推理するにあたって、重要(ぽい)
ヒントまで明記されているので読まずに流すのも気がひけます。
ストーリーだけを楽しむ分にはいいですが、著者の作品はトリック以外であまり
読むべき所がない気がするのでチェックした方が良さそうです。

トリックの点では今までで一番良かったです。
特に、足跡がなかった事のトリック。刑事のセリフじゃないですが、
そんな単純な事だったのか、という種類のもの。
しかし、犯人と、犯行の人間関係も看破しえてこそ辿り着く真相なので
よく考えられていると思いますね。


「嘘をついている」という蘭子の発言の真相も、ちょっとした発想の転換なので
もしここでピンと来ていても自分は蘭子と同じ思考はできませんけどね。。
気付けるようなら論破できるのかも。


蘭子さん、さすがに今回は「蘭子さんも血の通った人間なんだな」と
思えてほっとしました。
我が身ごとでなくてもこれくらい感情を見せてもらえていたら
私の蘭子さんに対するイメージも一新するんですけどもね。