すべてが猫になる

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螺旋館の殺人 (ねこ3.8匹)

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講談社文庫。再読。


10年前、第一線で活躍するミステリ作家だった田宮は、久しぶりに
三十周年書き下ろし企画の一つに参加、執筆することになった。
スランプに悩み、山荘で引きこもって執筆する田宮。その田宮の元に、
作家志望の女性が自作を携えて来訪したがーー。


前作「倒錯のロンド」と似通った道具立てですが、もちろん
トリックは違います。叙述トリックであることはもう氏の場合
伏せませんが。

この作品はかなり折原ミステリ初心者向け。
とは言っても、他作家の同じ手法のものよりはややこしいんですけどね。
読み返さなくても理解できます、……って、通常の折原マジックは
ねえ、、、「○○ページ参照」の箇所に戻らない事には(いや、戻っても怪しい)
ねえ、、、。

トリックに哀愁がある、というのはおかしな表現でしょうか。
本来、叙述トリックというのは読者のみに仕掛けられたトリックであって、
登場人物にとってはただの「成功ストーリー、あるいは自伝、もしくは日記」
であります。
まるで主人公が自分の人生をドラマティックに語るような。真実が告げられた時、
「がんばったじゃないか」と気安く肩を叩けないようなそんな気分に陥ってしまいます。


中盤までは、実は先が読めます。ふふふ。折原世界は登場人物が少ないので
3パターンくらいを想定していればきっとどれかが…………ハズします。