木江恭著。双葉社。
SNS上の企画「あなたの身に起きた〝鬼〟のエピソードを教えてください」に寄せられた三つの事件。 投稿者あるいは関係者三名の前に現れたのは、ひとりの男だった。桧山は「推理ゲーム」と称して隠された真相を暴いていく。 秘密にしていたことが知られたとき、すがっていたものが壊れた瞬間、優位だと思っていた自らの立場が危うくなったときの表情が見たい――桧山の真の目的はそれだった。(紹介文引用)
初めての作家さん。たまたまネット見てたら千街晶之さんのオススメでこの本が出てきたので気まぐれで読んでみた。薄いし読みやすいし、私からもオススメかも?
フリーライターの霧島がSNSで募集した企画は「あなたの体験した鬼の話を100文字以内で聞かせてください」というものだった。様々な体験談が寄せられるが、実際に取材に赴くのは写真家の桧山。「影踏み鬼」「色鬼」「手つなぎ鬼」「ことろことろ」などの懐かしい遊びをモチーフにして、体験者から恐ろしい話が聞かされる。実際登場するのはいわゆる空想上の「鬼」ではなく、鬼のような心を持った人間に過去こういう目に遭いました、という話ばかり。なのでガチの怪談を期待してはいけない。一応ミステリー仕立てになっていて、桧山が「ルールを設定した机上の空論」で推理を開陳し、体験者の疑問やわだかまりを解消するという構成。
しかしこの推理がなかなか一筋縄ではいかないというか。結局鬼という存在が体験者の中にもあるものであったり、知らないほうが良かったような真実(ではないかもだが)を知ってしまったりする。結局、1番の鬼は桧山では?と思わせる展開はうまいなと思った。最終話でも連作ならではの仕掛けがあったりするし、なかなかのレベルに立つ作家さんかも。