すべてが猫になる

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むかしむかしあるところに、死体がありました。 (ねこ4.3匹)

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青柳碧人著。双葉社

昔ばなし、な・の・に、新しい! 鬼退治。桃太郎って……え、そうなの<? br>大きくなあれ。一寸法師が……ヤバすぎる! ここ掘れワンワン。埋まっているのは……ええ!? 「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった皆さんご存じの 《日本昔ばなし》を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといった ミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ! (紹介文引用)
 
やっと読めた。話題になってすぐ予約して結構前に廻っては来たんだけど、コロナのために一回流しちゃったので今になった。もう続編出ているというのに。すぐ予約だ。
 
日本の昔話を下敷きにしたミステリーが5編。どれも有名作なので前知識いらず。(一寸法師だけはちゃんとした話を知らないまま大人になったけど)意外にもしっかりとしたロジックの作品ばかりでとても良かった。
 
一寸法師の不在証明」
右大臣殿の隠し子、冬吉が自宅の小屋で絞殺された。鬼を倒し春姫を救い、婿となった一寸法師に疑いがかかるが、一寸法師にはその時間鬼の腹の中にいたというアリバイがあって…。
おもしろーい!打ち出の小槌や存生祀りのルールの使い方が凄くうまい!小槌を使ったという証拠がちゃんとあるのもいいなあ。スキがないロジック。検非違使のふりをしていた黒三日月の正体にほっこり。
 
「花咲か死者伝説」
優しく人望のある花咲かじいさんが石で頭を殴られて殺されていた。じいさんが握っていたぺんぺん草はある人物を指し示していたが…。犬のしろが語り手となった作品。
次々と浮上する容疑者が個性的。三味線師匠や蛇女など。近所のいじわる爺さん腹立つなあ。草履の向きは何かあると思ってた!意外すぎる犯人だったけれど、しろがやったことはやはり悲しすぎる…。後味悪い。
 
「つるの倒叙がえし」
借金取りの庄屋を殺し家の奥の部屋へ隠した弥兵衛のところへ、道に迷い込んだつうが訪ねてくる。つうは弥兵衛に機織りをしているところを覗くなと言い、弥兵衛は死体のある奥の襖を開けるなと言い。。。
タイトルからして何か仕掛けてあるのは分かったけれど、まさかこういうことだとは。二度読み必至だね。それにしても弥兵衛は絵に描いたようなクズだったな。
 
「密室竜宮城」
亀を助けた浦島太郎は、亀の背中に乗って龍宮城へ向かった。だが城内では亀が蛸の壺を割ったという騒ぎが起こり、そのあと冬の間でおいせが昆布で絞殺される。事件の調査を頼まれた太郎だが…。
さかな版の図解、見取り図がある(笑)。漁師だからこそ気づけた、侵入した男の謎、海のものだからこそのトリック。ととき貝、なんかあると思ってたんだが…うまいなあ。独特のルールの中、ロジックが完璧。
 
「絶海の鬼ヶ島」
人間から金銀財宝などを奪っていた鬼たちへの復讐にやってきた桃太郎一味は鬼たちを皆殺しにしたが、鬼長老のおかげで生き残っていた鬼らがいた。やがて生き残りの鬼たちは年月をかけて平和な島を築くが、鬼太と鬼茂のつまらないケンカを発端に鬼茂の他殺死体が発見される。鬼茂の死体はかつてキジやさるに先祖たちが殺されたような無残な姿だったが…。
全員、名前の頭に「鬼」がついているので覚えきれなかった。。。まあそれもあって、これだけは乗り切れなかったかな。。殺害理由やトリックに今までのような繊細なロジックがあるわけではなかったので。物語は誰の視点で見るかでガラっと変わってしまうね。
 
以上。
ラスト1編がもう少しアレならもっとねこ点上げても良かったのだが、トータルでとてもレベルの高い作品だったし、何より楽しめた。自分は子どものころ、日本の古典はアニメ、海外のは本で、という接し方だったな。海外の名作全集はたくさん持ってたけど、日本のむかしばなしで持ってたのって「わらしべ長者」ぐらいしかない。