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リーシーの物語/Lisey's Story  (ねこ3.5匹)

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スティーヴン・キング著。白石朗訳。文春文庫。

作家だった夫を亡くした痛手を抱えるリーシーは、ようやく遺品整理をはじめた。すると、夫が自分に遺したメッセージが見つかる。彼は何かを伝えようとしている。それは夫の創作の秘密、つらい時に彼が訪れた異世界“ブーヤ・ムーン”に関わるものだった…。人に降りかかる理不尽との戦いを巨匠が全力を注いで描く超大作。(上巻裏表紙引用)
 
売れっ子作家スコット・ランドンの妻リーシーは、夫亡き後呆然とした日々を送っていた。、そろそろ立ち直らなくては生活がたちゆかない。やがて姉アマンダの精神病、スコットの未発表原稿の催促に翻弄されるようになるが…。
 
前半はいつものキングらしくスロースタートな上にリーシーの視点のみで進められるのでかなり退屈。長い長いアイドリングの末、やっと事件は起こる。スコットの原稿目当てに脅迫者が現れ、酷い暴行を受けるリーシー。同時にアマンダの病気が悪化し、命にかかわるほどの自傷行為と強制入院さわぎに発展。さらにスコットの壮絶な過去へリーシーの精神世界は飛ばされる。一つ一つのエピソードは過激で、スコットの父が長男を虐待死させるくだりは息が止まるほど残酷。盛り上がりは最高で、なるほど傑作なんだろうなあとは思うが…。物語の特性上、精神世界の密度が高くどうも乗り切れない。多視点で様々な人々を描き最後に繋がってどっかーんといういつもの構成ではないので、
何度も言うのも恐縮だが延々と退屈だった。リーシーのキャラクターのせいもあるかとは思うが…。夫の凄絶な過去や現実を乗り越え、家族愛と人生の再構築に目覚めるリーシーの姿は感動的ですらあったものの、これだけの内容が冗長に感じるとは何かしらの問題があるのではないか。キング自身がベストと断言するという本作、少し信頼を損なった。