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鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~  (ねこ3.8匹)

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周木律著。講談社文庫。

異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、ある手配が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!(裏表紙引用)
 
シリーズ第6弾。あと1作で終わるということなので、気になって仕方がないので一気に行くよ。
 
前作でまたまた衝撃の展開を見せ、喪失感でいっぱいの百合子を中心に進む本作。今でもあれは嘘でした、ってことはないかなあ…という願いむなしく。Y森林公園の奥にある鏡面堂へ、神に唆されてはるばる赴く百合子。ここは沼四郎が建てた最初の館なんだそう。26年前に起きた殺人事件は未解決のまま、荒れ果てた鏡面堂で百合子は「解き明かすべき光」を探す。
 
本作は前作と違ってまたまたきちんとした本格ミステリー。当時の管理人の手記が挿入されて、百合子がそれを読むという体裁。トリックは相変わらずわけわからんが、そのわけわからん感じがまた爽快。このシリーズ、登場人物全員が天才、秀才なので置いてけぼりなのだ。そもそも出てくる館が全部有り得ない構造でリアリティはないので、そこを突っ込む訳にはいかない。夢いっぱいでいいじゃないの。こんなもの全知全能の神じゃなきゃ解けるはずがないしねえ。百合子は解いたけど。
 
しかし百合子はじめ十和田(今回存在感がない)、神、藤衛、沼四郎に加えまた新たな重要人物が登場。あとがきにあるように、誰が主人公だか分からない。無機質な感じがいいんだけど、(しかし十和田エレガントエレガントうるさいな)最後の付記を読むとやはり天才にも人間臭い動機がくっついていて、一体最後は誰と誰がどう対決するのか。全部回収されるのかな。犯罪者だらけなので、放置はやめていただけたらと。
 
ところで百合子、頑なに自分は司の妹、宮司百合子だと言い張っているのに「お姉ちゃん」呼びをするシーンが引っかかる。。司が泣いてるよ。