すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

あいにくの雨で (ねこ4.2匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200606153756j:plain

麻耶雄嵩著。集英社文庫

町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。殺されたのは、発見者の高校生・祐今(うこん)の父親だった。8年前に同じ塔で、離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、親友の烏兎(うと)と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、町では次の悲劇が起こり――。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。(裏表紙引用)
 
20.6.6再読書き直し。
 
単体ものだが、烏有の弟・烏兎を主人公としたお話なのでスピンオフと言ってもいいかも。とにかく暗い話で、初読時の自分はどうやら本作をお気に召さなかったようだが…。生徒会のスパイを探す事件について「いらねえ!」と思ったことを除けば当時と印象は違った。記憶にあったよりはきちんと推理立っているし、青春ドロドロ物語としても麻耶作品のキャラクターらしい鬱屈さとサイコ感が際立っていて良かったと思う。
 
13章の、密室殺人を解いて犯人が誰かに気づくという部分を冒頭に持ってくるという変速技に最初は引いたが、肝心なのはその後の真相だった。烏兎が最後の最後に解いた悲しい事実も、友人たちの不幸も、「雨」というディテールにそっくりハマってゾクっとしたほど。
 
それにしても、烏兎は烏有の弟のわりにクセのない真っ直ぐな少年でホっとした。ちょっと暗かったり生真面目すぎるところは似ているが…烏有の両親がどんな感じなのかも知れたし。本当の意味でカンがいいのは弟のほうだね。