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震える牛  (ねこ3.8匹)

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相場英雄著。小学館文庫。

 

警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。当時の捜査本部は、殺害された二人に面識がなかったことなどから、犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。しかし「メモ魔」の異名を持つ田川は関係者の証言を再度積み重ねることで、新たな容疑者をあぶり出す。事件には、大手ショッピングセンターの地方進出に伴う地元商店街の苦境、加工食品の安全が大きく関連していた。高級ホテルの食品偽装、中国の期限切れ肉。「食品の闇」を予告した、現代の黙示録!(裏表紙引用)

 

 

初読みの作家さん。帯に引用されていた文章が刺激的だったのでずっと気になっていた作品。加工肉を「雑巾」呼ばわりする食品流通社会の闇とは何だろう。ファーストフードや廉価なスーパーの惣菜の原材料について興味があったので、物語というよりはそちらの方を意識して読んだ。それが思っていた以上のショッキングな内容だった…。考えただけで吐き気がする。まさか現実にこのようなことをしている企業があるとは信じないが、今後安い加工肉を買うのが怖くなってくる(スーパーやコンビニの惣菜を買うことはほぼないが、FFはたまに利用するので)。近いことはやっているのではないかと思うメーカーもあるなあ。。コンビニやFFのサラダがなぜ数日経ってもシャキシャキのままなのかは理由を聞いたことがある。だけどネットを見るとそれは間違いだという意見もあって、どれを信じていいか分からないのが現実。消費者がそれぞれ意識を高めないとこういう企業が後を絶たないのかもしれない。

 

未解決の殺人事件を追う、正義感の強い刑事・田川の存在は良かった。派手ではないが堅実で真面目で、おそろしいほどのメモ魔でもある。殺人者に関しては浅はかというしかないが…情状酌量の余地もあるのかな…。タイトルの「震える牛」の意味が思っていたのと違ったので、その言葉が終盤で出てきた時はこちらも震えた。十数年前欧州で発生し日本を混乱に陥れたBSE騒ぎは私も忘れていない。風評被害で多くの精肉店焼肉屋が打撃を蒙ったであろう。被害者と田川・そして相棒の池が執念で探り当てた犯罪…しかし作者は事件が解決して万々歳、などという甘い結末を用意しなかった。警察ひいては国をあげての闇を暴き出したとも言えるかもしれない。