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閉じられた棺/Closet Casket  (ねこ2.8匹)

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ソフィー・ハナ著。山本博、遠藤靖子訳。ハヤカワ文庫。

 

招待先のアイルランドの荘厳な子爵邸で、ポアロと盟友キャッチプール刑事は再会を果たす。その夜、ディナーの席で、招待主である著名作家が全財産を余命わずかな秘書に遺すという不可解な発表をした。動揺した人々がようやく眠りについたころ、おぞましい事件が…。“名探偵ポアロ”シリーズ公認続篇、第2弾! (裏)

 

 

※辛口です。ご注意下さい。


エルキュール・ポアロの公認続編、ソフィー・ハナ第2弾。

 

ストーリー自体は面白いと思う。よくある富豪の相続争いものだが、実子ではなく余命わずかな秘書に遺産の全てを譲るというあまり類を見ないもの。秘書は相続前に死んでしまう可能性が高いのにどうしてそんな遺書を残すのか。なぜ書き換えたのか。そんな折、当の秘書はかつての恋人であり看護師でもある女性との婚約を発表してしまった。遺産は秘書の死後看護師に?

 

――という、なんと分かりやすい死亡フラグ。案の定秘書は撲殺されるのだが、殺害現場を見たという看護師の話の辻褄の合わなさや、秘書が隠していたとんでもない秘密が明らかになって現場は大混乱。話の盛り上がりだけで言うと本家も真っ青なほどなのだが、ミステリとしてはガッカリ。あまりクリスティを神格化し過ぎて盲目になりたくはないのだが、殺人の残虐さといい、読みにくさといい、読んでいて悲しくなるレベル。事件前に「使用人を数に入れていいのか」なんていうポアロのメタっぽいセリフも好きではない。これがパスティーシュなら構わない。しかしクリスティの公認続編に徹するなら一定の水準は保って欲しい。本家に駄作なんかない。