すべてが猫になる

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夢にも思わない  (ねこ3.6匹)

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宮部みゆき著。中公文庫。

 

秋の夜、下町の庭園での虫聞きの会で殺人事件が。殺されたのは、僕の同級生のクドウさんの従姉だった。被害者には少女売春組織とのかかわりがあったらしい。無責任な噂があとを絶たず、クドウさんも沈みがち。大好きな彼女のために、僕は親友の島崎と真相究明に乗り出した…。中学生コンビの推理の行方は!?好評の古川タク描き下ろしパラパラマンガも収録。(裏表紙引用)

 

 

宮部さんの読みこぼしを。「今夜は眠れない」で活躍した中学生男子・雅男シリーズ第2弾。てか第1弾の内容はすっかり銀河の彼方なのだが^^;チョコチョコ「以前の事件」の話してくるから参った。

 

これは中学生が巻き込まれた事件であり、語り手も中学生だけど、ジュブナイルと言っていいのかどうか。内容結構重たい。なんてったって売春組織だからね。雅男の恋するクドウさんの従妹が白河庭園で盆の窪を刺されて殺され、調べによるとその従妹の亜紀子さんは素行が悪く、売春に関わっていたらしい。クラスや近所での評判が悪くなるクドウさんを助けるために雅男と親友島崎は探偵活動に乗り出すが・・・というお話。

 

事件そのものはそれほど面白いものでもなくて(失礼)、割とすぐ真相は割れる。おそらくメインはそっちではなくて、宮部さんが描きたかったのは「人間の隠された悪意」のほう。まだまだ純粋な中学生男子の視点でそれを描くことによって浮き彫りになる、自分が生きている世界、信じていたものの危うさが悲しく切なく描き出されている。これ、男子と女子が逆だったら絶対成り立っていないよなあとか思ったり。女の目で読んだらすぐに悪意のある人物が誰か分かってしまう。1人1人、性格やその人の今までの人生まで想像出来てしまうリアルな筆致は流石だな。