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山女日記  (ねこ4匹)

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こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。……真面目に、正直に、懸命に生きてきた。なのに、なぜ? 誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。(裏表紙引用)

 


これは良かった。湊作品は文庫で制覇しているが、これがナンバーワンかな。

 

本書は「登山」をテーマにした連作短篇集。全てのお話が女性視点となっていて、それぞれの女性が人生に悩みを抱えている。そんな女性たちが山に登ることによって人生を見つめ直していく物語。女性のドロドロとしためんどくさい心理を巧みに描いている、という面では湊さんらしいと言えるが、これは完全に巷で「白湊さん」と呼ばれる方向性の作品。不快な気持ちで終わる作品が1つもない。女性が抱える「結婚するかどうかの問題」「結婚してからの問題」「結婚していないことの問題」を、登山というスポーツになぞらえ、人それぞれ自分が見つけた頂上にたどり着く。そのあとの「下山」というミッションがまるで彼女たちのこれからの人生のように感じられるのが物語の深みだろう。現実では出した答えがゴールじゃないからね。

 

読者それぞれにもし思い当たるエピソードがなかったとしても、人生のどこかで必ずシンクロする、あるいはしてきたはずの悩みや問題とそうかけ離れてはいないはず。もし「自分は夫とも姑とも仲がいいし同僚と自分を比べたりしないし友だちにイライラしたりしない」と思うのならば、それはそうなるまでに色々な経験を経てきた結果でしかないと思う。

 

とは言え、嫌いなタイプの女性が多かったけど(笑)。想像の浮気で自分をイライラさせてる律子(不倫する女には二種類いる、って分析してるけど、私、そのどっちにも当てはまらない不倫してる女性知ってるよ。「ラクなほうに流されてるだけで何も考えてない」タイプ。意外とコレが一番多いと思うけどな)、ワガママ勘違いおばさんの木村さん(あなたもお礼を言いなさい、のくだりで首絞めたくなった^^;)とか、ごめんだけど律子の姉の娘とか…。女って、年齢関係ない^^;70歳でも10歳でも女よ。
好きなお話は「火打山」「槍ヶ岳」「トンガリロ」。

 

それにしても、それを上回るひどい男ばっかり出てきた気がするな。湊さん、男性に何か恨みでもあるの?ってくらい^^;