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さよなら、シリアルキラー/I Hunt Killers (ねこ3.8匹)

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バリー・ライガ著。満園真木訳。創元推理文庫

 

ジャズは高校三年生。町ではちょっとした有名人だ。ある日、指を切りとられた女性の死体が発見され、ジャズは連続殺人だと保安官に訴える。なぜジャズには確信があったのか―彼が連続殺人犯の息子で、父から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだ。親友を大切にし恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自ら犯人を捕えようとする。全米で評判の青春ミステリ。(裏表紙引用)

 


初読みバリー・ライガ。大量殺人鬼を父親(ビリー)に持つ高校生・ジャスパー(ジャズ)・デント三部作の第一作。ドン・ウィンズロウみたいなのを期待してちょっと違った。バリー・ライガはYA小説を中心に描いている作家ということで、本書もティーンエイジャー向け。と言っても内容が結構悲惨だし文章も大人向けにしては読みやすい程度なので対象としては高校生以上をお薦めしたいかな。

 

まずジャズの生まれた境遇が悲惨。三桁にのぼる殺人をこなしてきた父親って。。。ビリーは死刑ではなく刑務所にいて、ジャズの母親は謎の死を遂げており(ビリーが殺したっぽいなあ^^;)、ジャズは幼少のころからビリーに殺人の心得を教育してきたっていう。ジャズは自分にもその欲求が潜んでいるのではないかと日々怯え、アルツハイマーを患う祖母に引き取られて暮らしている。もう書いているだけで悲惨の一語だが、この物語は不思議と陰鬱で重苦しい雰囲気になっていない。YAとして描かれているというのもあるが、ジャズには信頼出来る友人が2人いるからだ。

 

1人は血友病を患う孤独な少年・ハウイー。ハウイーはその病気のためにちょっと油断すると顔を血だらけにして立っていたり命の危険も多いが、とても優しく明るい少年だ。もう1人はジャズの彼女でもある黒人のコニー。明るくて正義感が強く、ジャズを心から愛している。友人からして個性的な面を持っており、間違いなくこのジャズの「捜査ごっこ」のスリルを高め、盛り上げてくれる存在だった。

 

しかしまあ、そうでなければ話は進まないとはいえ、警察がとことんマヌケに描かれているなあと^^;ジャズ達、色んなところに簡単に入り込めすぎだし、ピンチには飛んで来てくれないし。保護者的役割のウィリアム保安官は良かったけど、高校生に猟奇殺人の現場を見せるってどうなのよ。。。実はジャズも含めて、結構登場人物がチンタラしていてイライラすることも多かったり。

 

そんなわけで好みとしては「微妙?」と思って読んでいたのだが、型通りの展開の後に来る怒涛の追い上げに興奮した。あまりにも高校生が背負うには絶望的な引きだが、ジャズの心意気、決意は素直に応援したいと思う。まあ機会があれば読破しようかな、ってことで。色々謎も残ってるしね。