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夢幻花  (ねこ3.7匹)

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東野圭吾著。PHP文芸文庫。

 

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。(裏表紙引用)

 


東野さんの文庫新刊はノンシリーズ。かなりの自信作とのことで期待して読んだ。

 

ストーリーは、定年を迎え1人寂しく花を育てながら暮らしていた老人(秋山周治)が自宅で殺され、大事にしていた鉢植えが盗まれていたことに気付いた孫娘(秋山梨乃)に接触してきた男の弟(蒲生蒼太)と共に「黄色いアサガオ」の秘密を解き明かしていく――。というもの。物語は過去のММ事件や蒼太の初恋相手との謎の再会、事件を単独で追う刑事(早瀬)視点と多方面に枝分かれし、最後にその全てが結びつく。

 

1人1人のキャラクターにしっかりとした背景を描き物語に息を吹き込むその力はさすがと言わざるを得ない。圧倒的なリーダビリティで読者を引き込み翻弄するこの作品の満足度は高そうだ。欲を言えば、あと1つ何かが足りなかった。アサガオの秘密という点では、「そういう人ならまあそういう物に手を出していても不思議ではない」し、その正体についても既視感があるもので「意外」というほどではなかった。もちろん私の身近にはないものなので想像がついていたわけではないが。蒼太の恋の行方については異論はないつもりだが。。。それよりも蒼太の複雑な家庭の事情についても1つの解答を見いだせたのだから、「その後」の関係をもう少し覗きたかった気がする。東野作品ではかなり良いほうの作品だとは思うが、様々な理由で「好き」とは言い難くなった。東野さんだからね、もっともっと震えるものをそりゃ読みたいさ。