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覘き小平次  (ねこ3.7匹)

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京極夏彦著。角川文庫。

 

押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。ある時、旅巡業の声がかかるが、それは凝り続けた愛と憎しみが解き放たれる修羅の幕開けであった。女房・お塚を始め、小平次の周りに蠢く生者らの欲望、悲嘆、執着が十重二十重に渦巻き絡み合い炸裂し―やがて一つの異形の愛が浮かび上がる。人間という哀しい華が圧倒的に咲き乱れる、これぞ文芸の極み。古典怪談に材を取った『嗤う伊右衛門』に続くシリーズ第二弾。第16回山本周五郎賞受賞作。(裏表紙引用)

 


嗤う伊右衛門」に続く、幽霊シリーズ第2弾。と言っても第1弾を読んでおく必要はなし。伊右衛門のほうはかなり前に読んだので内容はさっぱり覚えていない。時代ものが苦手なので会話文などはかなり苦労して読んだが面白かった。

 

お塚の内縁の夫である木幡小平次は、幽霊役しか出来ない廃者役者。いつもいつも部屋の押入れに篭もって、お塚を覘くだけの日々。生きてる甲斐もなく、楽しいことも悔しいことも何もない、ただ生きているだけの小平次をお塚は心の底から嫌っていた。ほとんど何も話さない小平次だけど、お塚は本当は小平次を愛しているのではないかなー?と思わせる流れが上手。小平次とお塚に関わる登場人物の過去や心の内が順に明らかになって行き、恨みを晴らしたり逮捕されたりと人間模様が移り変わって行くにつれ、なぜお塚は小平次と一緒にいるのか、小平次はお塚をどう思っているのかが徐々に浮き彫りになって行く。そこに言葉がないのがまたいいんだな。

 

語るだけの幽霊話かと思いきや、犯人探しをしたり殺人に巻き込まれたりと実はドタバタ、爽快。演劇で観たらだいぶ面白いかもしれない。多九郎なんかはめっちゃ感じ悪い人にやって欲しい。