すべてが猫になる

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この闇と光  (ねこ3.9匹)

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服部まゆみ著。角川文庫。

 

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!(裏表紙引用)

 


初読みの作家さん。不勉強ながらこの作家さんを最近まで知らなかった。もねさんにもご紹介頂いていたのだが、本屋でも最近プッシュされていたので「一番出来がいい」という本書を。

 

結論から言うと、大変大変好みだった。国不詳の、ラプンツェルの世界を彷彿とさせるお城を舞台にしたゴシックミステリ。皆川博子氏が推薦しているだけあって、こういう世界観私なら絶対ハマる。ヒロインレイアはある国の王女で、王である父、使用人?のダフネと共に城に監禁されているらしい。なぜ「らしい」のかと言うと、レイアは盲目なのだ。盲目の語り手ゆえに、彼女が語ること、感じることが真実なのかどうか読者には(レイアにさえも)分からない。ミステリとしては最高点の緊張感と言える。

 

私のようなスレたミステリ読みは、「何かがある」「予測不能」と言われると「よっしゃやったるか」と戦闘態勢に入るのは当然のこと。そしてこの作品に関しては奇跡的に2つの大きな謎に気づくことが出来た。国が〇〇であることはあまり隠す気もないのか、ほとんどの読者は気づいてしまうだろうが。レイアが〇であることを見抜けた自分凄い・・・のかは分からないが、レイアと父の行動で明らかにおかしいものがあったのだ。

 

そして結末編は当然その事実が明かされるのだが、意外なのはここから。「あれ?謎が解けたのにまだページあるぞ」と思うスレた私でも、その先は予測不可能だった。「どちらにも考えられる」結末は嫌いではないが、ラストが少し雑だった気がする。少し消化不良。

 

だがしかし、それを補ってあまりある耽美な世界の魅力に取り付かれた。他の作品もぜひ積極的に読んでいこうと思う。やはり「時のアラベスク」が良いかしら。