すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

動物好きに捧げる殺人読本/The Animal-Lover's Book of Beastly Murder (ねこ3.7匹)

イメージ 1

 

犬、猫、駱駝、象、鼬、……。彼らが人を殺してしまったのには、やはりそこにいたるまでの事情というものがあったのです。最新式の養鶏場を舞台に悲劇と狂気が描かれる「総決算の日」、滑稽にしてブラックな、少年の日の物語「ハムスター対ウェブスター」など、13種類の動物たちの物語を収録。毒とユーモアの組み合わせが、ハイスミスならではの独特の妙味を生み出す傑作短編集。(裏表紙引用)

 

 

ウチに届いたやつ新しい方なのかな?(2002年7版とある)表紙はリンク先のやつのほうがほのぼのしているので良かったら見てみて下さいな。私はこちらの方が好きだが。

 

ということで、久々ハイスミスを。動物を語り手にしたものばかりではなく、人間目線のものも。どの動物にも<飼い主>というものがいて、それはペットとしてだったり仕事のパートナーとしてだったりと様々。基本的には、「飼い主やそれに準ずる人間に虐待されてそれを恨んで殺す」ものがほとんど。ペット目線もあれば人間目線もあり。ゆえにだいたいどのお話も先が読める。人間の勝手さ横暴さが強調されていて、それを残酷さで演出してみましたみたいな。鼠やゴ〇ブリ(お前動物か?^^;)が主役なんてものも。前半などは「「コーラス・ガールのさよなら公演」は愛する前の飼い主が撃った、とか「駱駝の復讐」では次の飼い主もヤバかった、とかいう風にすればもっと切れ味良くなるのに」と思うものがいくつか(←何様)。そうでなくクールに終わるところがかえっていいのかな?

 

どれも面白かったが、特に好きなのは猫が虐待される飼い主を命懸けで守る「最大の獲物」、残酷だが飼い主と豚の立場が逆転する「松露(トリュフ)狩りシーズンの終わりに」、馬車で祖母を殺そうとする夫婦から身を守る結末が爽快な「機関車馬」、ハムスターを異常繁殖させた少年の悲劇「ハムスター対ウェブスター」、多感な年頃の少年が家族に反対されて飼う鼬が起こす騒動が笑えない「鼬のハリー」あたり。ブラックユーモアは楽しいが13連続は疲れる。