すべてが猫になる

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オジいサン  (ねこ3.8匹)

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京極夏彦著。中公文庫。

 

何者かに「オジいサン」と呼ばれたことを寝床で思い出した、とある朝。推理したり慌てたり、調子に乗って反省したり。若ぶらず、気弱にもならず―寄る年波をきっちり受け止め粛々と暮らす、益子徳一(72)の一週間。 (裏表紙引用)

 


結婚歴のない、一人暮らしの老人(益子徳一・72)の1週間を、徳一自身の語り口で綴るというただそれだけの小説^^;京極さん、こんな本も描くのね。

 

で、どうだったかと言うと、これがなかなか面白かった。京極さんの文章だからっていうのもあるのだけれど、徳一のキャラクターが愛らしくてするする進む。地デジの意味がわからなくて、(教わっているのだけどね^^;)なぜ田中電気は説明しないんだとブツブツ。インターネット、メール、世の中の速い動きについていけず悶々。だけど地域の役に立ちたくて、政治や教育にも一家言持っていて、と本人は本人のポリシーをしっかり持って生きている。昼食がうまく作れずに右往左往している様子とか、スーパーの試食コーナーのおばちゃんに一人ツッコミを入れるくだりとか、オイオイ大丈夫かこのじいちゃん、と心配になる一面も。まるで一人漫才のような徳一の語りにいつの間にか引き込まれ、最後には情まで湧いて来てしまった。ほんと可愛いよ徳一さん。

 

老人になったらこんな感じなのかな?と想像しながら、自分が思っている以上に自分も老人になっても「自分のまま」生きていけるんじゃないかなあ、という希望も見いだせる作品。