ケリング家の若妻セーラは、フレデリック大伯父の葬儀に押しかけてくる人々に出す食事のことを考えながら、納骨堂の開扉に立ち会っていた。ところがようやく開いた扉の奥にあったのは、見知らぬ女性の他殺死体。数十年間埋もれていた犯罪と関わってしまったセーラは、成り行きで事件を調べることに……。古都ボストンを舞台にした人気シリーズの第一弾、臨場感に溢れた傑作長編。(裏表紙引用)
マクラウド初読み、セーラ・ケリングシリーズ第一弾。2015年復刊フェアの一品。
このマクラウド、ユーモア・ミステリ作家だという認識があったが、本書は全く笑えない重く寂しい真面目な作品だった。歳の離れた従兄を夫に持ち、耳と目が不自由な姑と同居。それだけでもセーラの苦労たるや想像に難くないのだが、この夫が少々優しすぎて頼りない。「君と結婚したのはそうしろと言われたからだ」とか言うか普通。
しかし、夫婦の愛が本物であるのが救い。そんなこんなで事件よりもセーラの身辺模様のほうに興味の比重は行ってしまうのだが、中盤からの展開が意外すぎてえげつなかった。こんなんあり?気の毒という言葉では追いつかないほど辛い目に遭うセーラ。それでも気丈にふるまう姿が哀れを誘う。一見気の強い性格だが、こういうジャンルのヒロインにありがちな出しゃばりの側面は持っていないため、巻き込まれ感が強い。終盤の緊迫感は待ちに待ったものだが、ここでも作者はセーラに容赦なし。もうやめてあげてくれ。。。
第二作からは明るくなるとの噂を聞いてホっとする。この第一弾を読んでいるのとそうでないのとではこれからの印象がまるで違うと思うので、ぜひ順番通りに読んでいただきたいかな。個人的にはもう一つの人気シリーズ〈シャンディ教授〉ものも気になる。