すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

虚像の道化師  (ねこ3.7匹)

イメージ 1

東野圭吾著。文春文庫。

 

ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。男は何かから逃れるように勝手に窓から飛び降りた様子だったが、教祖は自分が念を送って落としたと自首してきた。教祖は本当にその力を持っているのか、そして湯川はからくりを見破ることができるのか(「幻惑す」)。ボリューム満点、7編収録の文庫オリジナル編集。(裏表紙引用)

 


ガリレオシリーズ~(もう第何弾かわからない)。単行本、「虚像の道化師」と「禁断の魔術」を合わせたものだそうな。お間違えなきよう。ただし「猛射つ」は除く、とか「その他は書き下ろし」とか書いてあるのでどういう編集なのかサッパリわからぬ。単行本派、文庫派それぞれが読めていない作品があるのかな?まあとりあえず本書はボリュームたっぷりで相変わらず面白かったが。

 

「幻惑す」
新興宗教の教祖が、「気」で団員を殺したという事件。湯川さんはすぐにその正体を科学的に暴く。ドラマでは記者の役が吉高由里子ちゃんになってるね。。内海さんだとこういうのに引っかかるってキャラ的におかしいからかな。

 

「透視す」
草薙に銀座のクラブに連れて行ってもらった湯川。そこで出会った、不思議な能力のあるホステスが殺されたという。なかなかの人情ドラマに仕上がっていて泣ける。トリックは大学の授業を聴いているかのようだが「へー、そんなことが」と思うしかない。

 

「心聴る」
体調を崩した草薙が巻き込まれた、幻聴による暴行事件。湯川が暴いたのは、とんでもない仕掛けだった――。OLのほうに仕掛けた犯罪、気持ち悪い( ´;゚;ё;゚;)。ここで出てくる北原という刑事が結構イヤなやつなのだが、湯川にギャフンとやり込められて気持ちいい。最後心を入れ替えるあたりは先日読んだ竜崎シリーズに通じるなあ。

 

「曲球る」
野球選手の妻が殺された。殺害場所の謎や妻が持っていたプレゼントの謎が湯川の頭脳によって解き明かされる。全てが科学に基づいたものではない推理なのでハナから頭がいいんだということが分かる。

 

「念波る」
双子同士にテレパシーというのは本当にあるのか?双子の片割れの女性が殺されかけたことを予知するなど、不思議な事件を扱っている。根っからこういうものを信じないイメージのある湯川だが、全てを検証するという科学者のポリシーが見てとれる。

 

「偽装う」
草薙と湯川は、元バトミントン部の仲間の結婚式に招待されたが、あいにくの大雨。会場であるリゾートホテルで起きた作詞家夫婦殺人事件。。担当でないにも関わらず、草薙は巻き込まれ湯川は推理をする。こういう計算上どうこう、というのは言われても「え、ほんとにそんな理屈通りいくの?」と思ってしまうのだが、まあ賢い人が言うのだからそうなんだろう。ラストの判断は、湯川がすっかり人情派キャラに転向したことがわかる。

 

「演技る」
劇団員の男性が刺殺された。凶器は劇団に関するもので、団内でいざこざもある。事件は湯川の推理で単純なものかに見えたが――。唯一の叙述もの、と言っていいのか。どういうひっくり返し方をするかを期待するならば、期待通りの出来かと。心情的に疑問に感じるものもいくつかあったが。


以上。
特別コレ!というものがあるわけではなく、どれも平均的にとても面白かった。しかしアレだな、ドラマって有難いな。文章じゃどういう装置?機械?なのか映像的にあまりイメージ出来ないや。ドラマでは内海さんがとても良かったけど、原作だといてもいなくても一緒のような。。コッチでは草薙さんオンリーで良いんじゃないの。