すべてが猫になる

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チックタック/Ticktock  (ねこ2匹)

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ディーン・クーンツ著。風間賢二訳。扶桑社ミステリー文庫。

 

トミーは、幼いころに家族に連れられて命がけで故国を脱出、アメリカに亡命を果たして以来、成功をもとめて奮闘してきた。家業を捨てて新聞社に入り、小説も売れた。今日は、そんなトミーの新たな門出の日。記者を辞め、作家専業になるのだ。まずは、コルヴェットを買った。大排気量の新車。これこそ、アメリカン・ドリームの象徴だ…ところが、帰宅したトミーを、信じられない事態が待っていた。自宅の玄関に置かれていた見知らぬ手作りの人形が、突然牙を剥いてトミーに襲いかかってきたのだ!(裏表紙引用)

 


クーンツは巨匠・キングの次ぐらいに好みに合う作家だが、そんな自分が恥ずかしくなるぐらいのハズレ本も存在していたようだ。このダメージは大きく、もしクーンツ初読みが本書だったらこの本を燃やすぐらいでは飽き足らなかったかもしれない。

 

私は個人的にB級ホラーが大好きで、特に「人形の怨念」などの無生物に魂を吹き込んだ物語は大好物だ。映画「チャイルド・プレイ」などは数年に1度必ず観直して楽しんでいる。こちらもそういう系統だと信じて疑わず手を出してみたのだが。「人形が人を襲う」という設定はその通りだったに関わらず、そのクオリティは低く、人形そのものの造形は手抜きもいいところである。ぬいぐるみを作るのを途中でやめましたみたいな、バッテンの縫い取りだけの目と口。。。さらに上巻の中盤からもはや人形ですらない。しかも、何か人形の怨念があってこそ面白いのに、主人公を襲う根本的理由が皆無な上その怨念に何のエピソードもない。その時点でかなりの不安があったのだが、主人公と共に闘う魅力的な女性が登場してからの展開の残念ぶり、結末の適当っぷりはもうほとんどギャグである。ああ時間を返せ。

 

だがしかし、クーンツだから許せるのも事実。C級、いやD級ホラーだと思えば奇想天外なキャラものとしてなかなか読みどころはある。嫌いにはなれない証拠に、今後もクーンツは読み続けるのである。