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サファイア  (ねこ3.8匹)

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湊かなえ著。ハルキ文庫。

 

あなたの「恩」は、一度も忘れたことがなかったーー「二十歳の誕生日プレゼントには、指輪が欲しいな」わたしは恋人に人生初のおねだりをした……(「サファイア」より)。林田万砂子(五十歳・主婦)は子ども用歯磨き粉の「ムーンラビットイチゴ味」がいかに素晴らしいかを、わたしに得々と話し始めたが……(「真珠」より)。人間の摩訶不思議で切ない出逢いと別れを、己の罪悪と愛と夢を描いた傑作短篇集。(裏表紙引用)

 


湊さんの、7編収録の短篇集。いずれも宝石をテーマにしていながら、バラエティ豊かな作品が揃っている。

 

「真珠」
ある青年がタヌキ顔のおばさんにインタビューを行っているが、読者には最後まで二人がどういう関係かも状況設定も分からない仕組み。イチゴ味の歯磨き粉に異常にこだわるおばさん、酷い容姿なのに若い頃はモテていたと自慢するその姿がおぞましい。だけど、話が込み入って来るにつれ物語の姿は一変する。

 

「ルビー」
小さな島で暮らす一家のそばに、老人ホームが建設された。そこで暮らす1人の老人と仲良くなった一家の物語。黒い話かと言えばその通りなのだが、いわゆる悲劇的で破滅型ではない。むしろ少しホッコリするような展開に驚いてしまった。

 

「ダイヤモンド」
ある冴えない男が、若く美しい婚約者に翻弄される話。もうこれ、誰が読んでも騙されてるなってわかるよね^^;それにしても、「昨晩助けていただいた雀です」とは(笑)。湊さん、マジか。

 

猫目石
あるマンションに住む一家が、隣人の猫を探す手伝いをしたことがきっかけで平凡な日常が崩れ去ってしまうお話。誰にでも起こり得るかもしれない家族それぞれの秘密が暴かれる――。一体どういうことなのかハッキリ描かれていないところがコワイところ。結局家族は元の鞘?

 

ムーンストーン
議員の妻が夫を殺したところから物語は始まる。女が夫を殺した理由を紐解くというのではなく、女の学生時代に話は遡る。素晴らしい女の友情だなあ~。しかし、悪気もなく、毎日お弁当を食べている子のうち1人だけのお土産を買って来ないでケロっとしているってことがあるかなあ^^;買って来なくても別にいいけど、あげるなら普通本人のいないところでやらないかな。。。

 

サファイア
物をねだったり、奢られることが苦手な女性に恋人が出来た。やっと心を開ける相手に巡り会えたと思った矢先、彼自身を最大の不幸が襲い――。あくまで質素でありのままに生きている人だってだけだと思うのだけど。こういうタイプってどうしても薄幸に見えてしまうのはどうしてかな。

 

「ガーネット」
サファイア」の続き。彼について知りたくなかった事実を知ってしまった女性は、さらに彼が人々にもたらした影響を知ってしまうことになる――。こういう商法って、買うほうも買うほうだと思ってしまうんだけどね、私は^^;若いうちはしゃーないかな。


以上~。いやあ、面白かった、どれも。湊作品は結構どれも似ていて飽きるな~、とか思ったこともあるのだけど、ここに来て変化というか成長が見えはじめたような。黒いのは黒いのだけど、その先にあるものを描いているあたりが良かったな。