「疾風ロンド」東野圭吾著。(ねこ3.9匹)
「いきなりの文庫」シリーズ?では一番面白かったのでは。筆も軽く感じるし重みという点では名作に匹敵しないが、エンタメミステリとしては一気読みさせるうまさ。東野氏のお手軽系はすべてこういう風に描けばよいのに。とさえ思った。実は違うのにあからさまに怪しい人物を配置させる点や、未成年から見た事件の性格、最後のスターウォーズばりのアクション、どれを取っても映像的でうまい。オススメ。
「永遠の0」百田尚樹著。(ねこ4.4匹)
ベストセラー作。戦争ものは映像文章ともに苦手ではあるが、義務教育レベルの知識でも読者に通用する。数を読んでいないせいかもしれないが、そういう読者としてはこれ以上戦争の実態をわかりやすく伝えたものに触れてきていない。主人公がなぜ死にたくなかったのか、単に愛する人がいるからなどという理由ではない大きな秘密。その彼の人としての魅力と意外性を描き切った傑作だと思う。賛否あるかもしれないが擦れ切った自分にみずみずしい感情を呼び覚ましてくれたのは確か。これ以上のものをここ数年読んでいない、とまで言い切りたい。
「殺意は必ず三度ある」東川篤哉著。(ねこ3.7匹)
ギャグには耐性が出来てしまい、普通に何度も笑えた。シリーズものの第二作だが、前作よりもかなり好意を持てる出来。相変わらずトリックはおバカっぽいが、本格ものに分類するならスレスレの領域。この作品だけなかなか文庫にならなかったんだよね。なぜかしら。
「彼女のため生まれた」浦賀和宏著。(ねこ3匹)
シリーズものにしたのか(笑)。前作より文章力も上がり、読む手を止めない面白さを確立している!書き手の社会経験不足による常識力の低さがジャマをしたが、後半になると作者の個性にまで階級が上がる。真相についてはなんというか、今風に「ありえな~い」と言いたいところだが、犯罪者や加害者遺族、はたまた主人公やその妻(つまり登場人物ほぼすべて!)の思考の「ズレ」に当てはめれば筋は通ってるのかな、なんて。才能もあるし、作者への情もあるのだけどなんだかね。